『攻殻機動隊』が好きすぎて最新作が楽しみでならない。

海燕:ども。

てれびん:どもです。

海燕:いやー、NETFLIXで近日配信開始の『攻殻機動隊 SAC_2045』、楽しみだね!

てれびん:あれ、海燕さん、何だか映像がしょぼいとか、プレイステーション2の時代のCGと変わらないとか文句をいっていなかった?

海燕:ばらすなよう。いや、正直、2020年代のアニメーションとしては、作画的にはかなり辛いものがあるんだけれど、「持続可能な戦争(サブスティナル・ウォー)」がどうこうとか、設定的には面白そうじゃん?

 ぼくはなんだかんだいって『攻殻』関連の作品はすべて踏破しているので、この新作も楽しみに待ちわびているんだよ。さて、どうなるかなあ。うきうき。わくわく。

てれびん:じゃあ、ぶつぶつ文句をいわなければ良いのに……。

海燕:うるさい。黙れ。こっちは新型コロナウィルスの流行のせいで気が昂っているんだ。ぼくがロシア人だったら有無をいわさず射殺しているところだぞ!

てれびん:ひどい偏見だなあ。

海燕:ま、まあ、それはともかく。この際、いままでの『攻殻機動隊』の話でもしようじゃないか? 既知の事実をあらためて確認しておくと、『攻殻機動隊』は80年代末期の1989年に士郎正宗によって漫画の連載が開始されている。

 それから6年後の1995年に押井守監督によって『GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊』としてアニメーション映画化。これが世界的にも高い評価を受け、ウォーシャウスキー兄弟の『マトリックス』などに影響を与えたともいわれている。

 じっさい、かなり凄い映画だ。ちなみにこのときのマンガ版作中の時代背景は西暦2029年で、第三次核大戦と第四次非核大戦を経て電脳と義体の技術が驚異的に進歩した時代ということになっている。

 主人公は戦後の日本で暗躍する首相直属の攻勢組織である公安九課、通称「攻殻機動隊」の実質的なリーダー、草薙素子。世界有数の天才的な義体使いにして電脳ハッカーという設定なのだけれど、原作の彼女はわりと陽気なお姉さんだ(もっとも、彼女がほんとうに生まれたときに女性だったのかどうかは、謎としかいいようがない)。

 映画版ではその彼女にクールなキャラクターが付与され、ミステリアスな美貌の天才戦士にして戦術家という印象になっている。

てれびん:ふむふむ。でも、義体なんだから美女で当然という気もするけれど。

海燕:まあね。何らかの隠密活動に従事することもありえる以上、あまりにも目立つ義体では困るはずで、たぶん、彼女の外見はそこまで極端な造形にはなっていないだろう。じっさい、映画版では素子が自分とそっくりの義体をもつ人物とすれ違う場面があるくらい。

 ちなみにこの映画は押井守らしい衒学的な装飾が無数にほどこされたなかなかに難解な物語で、原作とはまったく印象が異なる。それにもかかわらず、ここから続く『攻殻』のイメージはこの映画が作ったといっていい。

 もちろん、初めに士郎正宗の天才的なイマジネーションがあってこそのものではあるけれど、それにしても、押井守の功績はあまりにも大きい。ただ、それだけにこの後の『攻殻』では、色々と苦労しているようだけれどね。

てれびん:ふーん。

海燕:いや、もう少し興味を示せよ……。映画版の『攻殻』は原作漫画のクライマックスのあたりを脚色した作品なんだけれど、素子たちのまえに「人形遣い」と呼ばれるネットワークのなかで超絶進化した人工知能が登場し、保護を要求するという展開になっている。

 ここら辺のSF的な展開はいま見ても凄いのひと言だ。サイバーパンクの嚆矢と呼ばれるリドリー・スコットの『ブレードランナー』と、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』が82年と84年だから、それから数年で現代にまで通じる世界設定の基礎を作り出した士郎正宗という人はやっぱりたいしたものだね。

 最近は肉感的な女性たちのエッチなイラストばかり描いている印象だけれど、超絶的な天才作家といっていいだろう。それを変人とはいえやはり天才的な映像センスをもった押井守が映画化したんだから、『GHOST IN THE SHELL』が作品的に成功したのも当然のことだっただろう。

てれびん:なるほどね。凄いんだね。

海燕:そう、凄いのよ。そもそもSFのアイディアやワールドはそれが時代の最先端を切りひらくものであればあればあるほど、「腐りやすい」。つまり、すぐに陳腐化してしまう。

 クラークとかハインラインとか、あるいはレムでもいいけれど、超一流のSF作家ではあるものの、その作品のディティールはいまではやっぱり古びてしまっている。科学技術の進歩の速さを思えば、それはしかたないことだとは思うけれどね。

 それはサイバーパンクにしてもそうで、いま、『ニューロマンサー』を読む人は、その頽廃的な世界に魅了されはするかもしれないが、やはり古めかしい印象を禁じえないだろう。いや、いま読んでもかっこいいとは思うんだけれどね、『ニューロマンサー』。

 何がいいたいかというと、すでに30年以上前のSF漫画である『攻殻機動隊』の骨子が、わずかなマイナーチェンジだけでいまなお通用しているということはものすごいことだということ。

 「電脳」と「義体」というアイディアを生み出しただけでも士郎正宗の才能は本物だ。『攻殻』がなければ、たとえば『マルドゥック・スクランブル』などもなかったかもしれないんだから。

てれびん:そういわれると、凄い気がしてくるな。

海燕:うん。まあ、押井守も凄いんだけれどね。ちなみに士郎正宗はこのあと、『攻殻機動隊』の続編である『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』、『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』という形で整理される漫画作品を上梓している。

 さらに押井守は『GHOST IN THE SHELL』の続編(的)映画である『イノセンス』を撮っていて、ふたつの作中世界はそれぞれ、パラレルワールド的に違う方向へ進んだ歴史を作っているといえる。

 これは「『攻殻』世界1.0」と「『攻殻』世界2.0」と呼んでいいだろう。で、これらに続く「第三の『攻殻機動隊』」を生み出したのが、押井守の弟子である神山健司監督だ。この人は『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』というタイトルの長編テレビアニメシリーズ全26話を制作した。

 これがまた、凄かった。じっさい、このシリーズをレンタルビデオで追っていたとき、続きが待ち遠しかったこと! 押井守の映画と比べても、エンターテインメント的な意味では非常に洗練された作品として評価できるだろう。

 作品の舞台は漫画と同じ2029年なんだけれど、草薙素子たちは「人形遣い」と遭遇することなく、公安九課として、いくつもの難事件を追っていくことになる。初めのうちはそれぞれの事件は独立しているように見えるんだけれど、しだいにその陰に「笑い男」と呼ばれるなぞの存在が見えて来る。

 数々の不可解な事件を起こしながら一切正体不明の「笑い男」とは何者なのか? そのなぞを追いかけるうち、素子たちは日本の闇に深入りしていく――。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえてキャッチャー・イン・ザ・ライ)』を題材にしながら一本の優れたミステリとして見る者を魅了する文句なしの傑作だ。

 この後、続編の『S.A.C. 2ndGiG』や『STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』も作られていて、それらも素晴らしいクオリティなのだけれど、やはりぼくはこの第一作の印象がつよい。何といっても、お話として面白いからね!

 今回、作られる『S.A.C.2045』はこの「『攻殻』世界3.0」の世界線の物語だ。不安が二割ほどなくはないけれど、残りの八割は楽しみだね!

てれびん:まあ、海燕さんが『攻殻機動隊』を大好きだということはわかった。

海燕:でそ。この後、「『攻殻』世界4.0」ともいえるシリーズも作られているんだけれど、ぼく的にはずっと3.0の世界線の未来を見て見たかったので、ほんとうに楽しみにしている。

 いやー、前作からもう20年近く経つんだよね。そのあいだ、『東のエデン』とか色々とあったけれど、『攻殻』の魅力は未だに薄れていない。とにかく! 楽しみに待っています! もう、それだけ。皆さんも、ぜひ、『S.A.C.2045』を見ましょう! おじさんと約束だ!

てれびん:うに。

海燕:では、皆さん、また、ネットの海でお逢いしましょう!