- 作者: 沢村凜
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/01/25
- メディア: 文庫
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ペトロニウスさんが絶賛していた本。なかなか時間を取れなくて、まだ冒頭を数ページ読んだだけなんだけれど、なるほど、これは傑作かもしれないですね。傑作の、それも★★★★★クラスの超弩級傑作の匂いがする。
小野不由美の『十二国記』なんかもそうなんだけれど、彫心鏤骨というのか、一行一字に至るまで繊細な心配りが行き届いた文章が素晴らしい。特別、華麗だったり花やかだったりするわけではないのだけれど、涼やかな緊張感を備えた名文だと思う。
物語は、ひづち(本当は漢字なのだけれど、PCでは出ない)と薫衣(くのえ)という、ふたりの傑出した王の「共闘」を描いていくらしいのだが、まだよくわからない。ただ、この時点でもう、真に優れた小説だけが持つ「風格」のようなものは感じる。ここら辺は、長年の経験によって磨かれたカンみたいなものだ。
ただ、もう、冒頭を読んだだけでも「ああ、これから厳しい話が始まるんだなあ」という予感がしてならない。本当に面白い物語というものは、どこかしら厳しさを備えているものだけれど、それにしても厳しそう。大丈夫かなあ。
まあね、ペトロニウスさんも書いているけれど、現代において受ける、売れる物語というものは、どこかしら願望充足要素を含んでいるもので、その意味でこの作品は売れ線からずれているんだろうな、と。
一部の読書を克己と心得る読書家たち(いるのか?)は例外として、普通はだれもひたすらに厳しいばかりの物語なんて読みたくないよね。やっぱり、そこは娯楽として読んでいるんだからさ、気持ちいい、格好いい、カタルシスのあるものを読みたいでしょう。
でも、そういう甘い認識ばかりで作られた砂糖菓子みたいな物語、ライトノベルなんて過半はそうだと思うのだが、それはどうしても内容に深みを欠く。人生の辛さ、苦み、渋みといったものを表現し切れない憾みがのこる。
だから、本当は砂糖菓子系の物語ばかり読まずに、硬質で骨太の物語に手を出すと良いのだけれど、そのためにはやはりちょっと覚悟というか、心構えみたいなものがいる。読んだら読んだで、一生の財産ともいえる読書経験になりえるのですが。
ま、とりあえず読んでみます。