「日本人はバカばっか(ただしオレは除く)」という言説の傲慢。


 まあ、タイトルの通りなんですが、Twitterを見ていると、よく「この国の人間は心の冷たい人間が多い」とか「日本人はいつのまにか正常な判断力を失ってしまった」といった、やたらに大きな話を常識のようにして語る人がいるよな、という話題。

 別段、日本や日本人を非難してはいけないとは思わないが、Twitterで見かけるこの手の日本語りは、根拠に乏しいところに特徴がある。たとえば原発事故にかこつけて、「いまだに日本は全原発廃炉を実現できていない。いつのまに日本人はこれほど情けない民族になってしまったのか」などと言ったりする。いうことが大きい上に大雑把なのである。

 ぼくはこの手の言説を初めに「この国は〜」などと大上段に構えることが多いことから、「この国語り」と呼んでいる。この国語りの特徴は、とにかく根拠なく日本ないし日本人を非難していることである。

 この国語りをしているひとのツイートを追いかけていると、あたかも日本人は世界最低最悪の国民であるかのように思えてくる。それくらい一方的かつ執拗にかれらは日本(人)を批判する。

 ところが、その根拠はきわめて薄弱であったりするのである。否。かれらの頭のなかでは、根拠は明白なのであろう。だって、あきらかに日本人の多くは愚劣かつ非情ではないか?

 しかし、いくら自分の頭のなかで整合している意見であっても、これではひとを説得することはできない。ひょっとしたらTwitterだから根拠を詳述することができないのかもしれないが、それにしてもその論理の脆弱さには驚かされる。

 これがたとえば韓国人ないし中国人に対していっているのであれば、かれらは「嫌韓」などと呼ばれることであろう。だが、かれらが憤る対象はほかならぬこの日本である。だから、かれらはどちらかといえば左翼的な思想の持ち主、ということになるのかもしれない。

 しかし、ぼくは思うのだが、どうであれ、ある集団に適当なラベルを貼って回ることには慎重であるべきではないか。

 日本人は、といっても、日本人にも一億人以上の人びとがいるわけで、その個性を一様に語ることは容易ではないはずだ。しかも、べつに何かしらの統計的根拠があるわけでもないのである。ただ、そういう気がする、というレベルの話なのだ。

 念のためにいっておくと、ぼくは何かしらの愛国心から「わが日本を冒涜するなどけしからん!」と言っているわけではない。そうではなく、どこの国であれ、「この国は〜」などと大きい主語で語ることには注意深くある必要がある、といっているのである。

 なるほど、現代日本人は堕落しているかもしれない。しかし、それでは、いったいどこにあらゆる問題を解決した理想的国民がいるというのか。そんなものはどこにもいはしないではないか。

 アメリカだろうが中国だろうがイギリスだろうが、その国なりの問題点を抱えているのであって、どこへ行ったって理想のアルカディアなどありはしない。なるほど、アメリカは人権思想が進んでいるかもしれないが、日本はアメリカのように年間一万人以上が拳銃で射殺されるようなことはないではないか?

 それなのに、さも日本だけがあらゆる面で特別に愚かで醜い国であるかのように語ることは、それこそばかげてはいないか。いや、現実に日本人がそれほどに愚かであり、それが明確に数字に表れている、という場合もあるかもしれない。

 しかし、その場合、発言者自身も日本人なのであるから、当然、「自分自身がそうなのだけれど〜」という、自己批判や反省を含む言説になるはずである。しかし、どう見てもこの国語りをする人びとがそういう反省を込めて語っているようには見えない。

 かれらが「日本人はバカばっか」というとき、「ただし、オレ自身は除く」とカッコが付いていることは、どうやら自明なことのようなのである。

 この場合の「日本人」とは、具体的な人間ではなく、もっと抽象的な存在のことであるのかもしれない。ぼくはそういうこの国語りを傲慢だと思う。

 特定の意見集団ではなく、大きく日本ないし日本人を非難するなら、具体的な根拠と、諸外国ではそうではないという事実を示してからにするべきだ(ついでに述べておくと、この国語りをする人びとは、日本を、いわゆる先進国以外の国とは比較しようとしないようである)。

 そうでなければ、その言説は、いかにも自己愛的な言及にならざるを得ないだろう。ちなみにぼくは漫画『日本沈没』にもその種の傲慢さを感じる。「日本人だけは本当にどうしようもない」というのは自由なのだが、それも結局は、平凡な国を特別視しているいい方に過ぎないように思うのである。


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