『ラブ・アクチュアリー』。

 ここのところ何となく映画を見て感動したいという気分になり、何本か立て続けに見ているのだが、これはあたりだった。素晴らしい。

 物語はクリスマスの五週間前、イギリスのヒースロー空港から始まる。そしてそこでメッセージが流れる。「ひとはいう。現代は憎しみと欲望の時代だ。そうだろうか? 9.11の犠牲者がかけた電話も「憎しみ」や「復讐」ではなく「愛」のメッセージだった。見渡すと、本当はこの世界には愛が満ちている」。

 そして、この言葉を証明しようとするかのように映画は愛の物語を描きはじめるのだ。主人公となるのは九組の男女。愛といっても必ずしも恋愛というわけでもなく、義理の親子のあいだの愛情だったり、盛りを過ぎたロックスターとマネージャーの仄かな友情だったり。

 いずれの物語も波乱に富み、意外性に満ち、見ていてハッピーになれるものばかり。そして九組の物語はクライマックス、ふたたびヒースロー空港に集い、映画はハッピーエンドを告げる。

 個人的に好きなのはヒュー・グラント演じる英国首相のエピソード。女好きのアメリカ大統領がひそかに想う女性スタッフに手を出そうとしたのを見て腹を立てたかれは、イギリスを誇りアメリカを揶揄する発言をし、やんやの喝采を浴びてしまう。

 BLURならぬBLUEに対抗心を燃やして問題発言を繰り返しながらのしあがっていく老いぼれロックスターの話も良いし、ある結婚式の場面が素晴らしい。

 新郎の友人が仕込んだサプライズで、突然、『All you need is love』の演奏が始まり、客席からも楽器を持った人々が立ち上がって、新郎新婦を祝福してくれるのだ。本物の愛がなければできない演出。ところが、この友人は実は新婦に恋しており――と物語は続く。

 物語は、いくらかビターなところもあるものの基本はスウィート。数々のハッピーなエピソードを甘すぎると思うひともいるだろう。しかし、これはクリスマス映画なのだ。これでいいと思う。

 最初に9.11のことを挙げていることからもわかるように、映画のメッセージはあきらかだ。9.11以降、世界には憎しみがあふれるようになった。しかし、じっさいに世界を眺めてみれば、そこには愛があふれている。愛を見てみよう、と。

 まさに愛こそすべてと映画は語っているのだ。できすぎたファンタジーかもしれないが、個人的には映画にはこうあってほしいと思う。事実を淡々と流すだけなら映画の意味がないではないか? 映画はひと時の夢。それでいいのだと、ぼくは信じる。