『ベイビーステップ』を読んでフェアプレイを考える。

ベイビーステップ(16) (講談社コミックス)

ベイビーステップ(16) (講談社コミックス)

 『ベイビーステップ』が第16巻に。この漫画も長くなってきたなあ。おもしろければいくら長くてもかまわない道理ですが、おもしろいからこそ一定の巻数で締めてほしいとも思うわけで、まあ、むずかしいところ。

 最近では16巻なんて短いほうかもしれませんが、そもそもその状況どうなのよ?とも思うわけで。『水の森』を高く評価するのは少ない巻数で綺麗に完結しているということもあるんだよね。

 『ベビステ』にかんしていえば、今回の大会が終わったあとラストエピソードに入るようだとぼく的に嬉しい。まあ、まだまだ続きそうではありますが……。

 さて、単行本はともかく、連載のほうでは、いくらかダーティーな手も含めた攪乱戦術で戦う選手との試合になっています。アンフェアといえばアンフェアなのですが、ルールの範疇でやっている以上、撹乱させられるほうが悪い、といういい方もできる。

 ここには「ルールの範疇でなら何をしても良いのか?」という問題が潜んでいるように思います。いわゆる「フェアプレイ」の問題ですね。で、この問いに対して「ルールの範疇なら(ときにはルールをはみ出しても)何をしても良いのだ」と答え、その思想を突き詰めたのが野球ギャンブル漫画の傑作『ONE OUTS』です。

ONE OUTS 1 (ヤングジャンプコミックス)

ONE OUTS 1 (ヤングジャンプコミックス)

 『ONE OUTS』は一応野球漫画なのですが、本質的に野球選手ではなく賭博師である主人公は、勝つためにありとあらゆる手を使ってあいてを陥れます。あいての虚を突くことはもちろん、時にはイカサマまで使いこなすありさま。

 作中ではその勝負師としての顔が格好良く描かれているのですが、じっさいにこんな選手がいたら真面目にプレイしている選手はたまらないだろうな、とも思いますね。必要なのは真面目にプレイすることではなく勝つことだ、といえばそうかもしれませんが。

 スポーツにはくわしくないのでここらへんは詳細に語れませんが、「フェアプレイ」という綺麗事は、何よりも勝利を第一義に置く近代スポーツにおいて既に失効しているのかもしれません。「勝つこと」が何より大切だとするなら、勝つためには何をしても良い、ということになる。

 しかし、本当にそうなのか? そんなにも勝利がすべてなのか? スポーツを究めたはてに待っているものは、本当にさわやかな感動なのか? ぼくはどうしても一抹の疑問がのこってしまう。まあ、こんなふうに考える時点でスポーツというか勝負事には向いていないのかもしれませんが……。

 「スポーツとは何なのだろう?」「フェアとは何だろう?」という問いはぼくのなかから消えません。スポーツはフェアな条件での勝負だから観るものを感動させる。しかし、フェアとはそもそも幻想では?ということ。

 スポーツとフェアプレイという話で思い出すのは、名作ゴルフ漫画青空しょって』の一場面です。この作品のなかで、主人公が対戦したある選手は、だれも気づいていないミスを自ら申請し、敗れ去ります。そうしてそのとき、かれは、キャディを務める息子をこう諭すのです。

「匠、父さんはプロゴルファーだ! ゴルフが好きだ! ゴルフにウソはつきたくないんだ! 勝利よりプロとしてのプライドがずっと大事なんだ!!」

 甘っちょろい理想主義、といえばそうかもしれません。しかし、それでもなお、この展開は胸を打つ。なるほど、どこまでも貪欲に勝利を求める純粋さもまた美しい。しかし、ぼくはどうしても敗者に目が行く人間なんですね。この話はまだ続きます。