エロゲ業界の老舗エルフの現時点での最新作。エルフのゲームを最後まで遊ぶのは大昔の『WORDS WORTH』以来。いわゆる萌え系のキャラクターを排してド直球のエロ描写を行う作風が、前作『媚肉の香り』では好評だったようですが、今作は、さて……。
物語は、主人公の少年が、幼なじみの少女が友人と抱き合っているところを見てしまうところから始まります。あいつらは自分を裏切っていたんだ、と決めつけたかれは、陰惨な復讐を開始するのですが――というお話。
ま、この手の「復讐もの」というのはエロゲのなかでは一ジャンルをなしているわけですが、それにしても序盤の主人公の鬱々とした語りはいっそ読み進めるのが辛いほど。どこまでも身勝手で自己中心的な理屈にはイライラさせられます。
しかし、話が進むほどにそれは変わっていき、そうして実は最後には――と、これは書いてしまうわけにはいきませんが、終盤まで行けばある種のカタルシスが待ち受けています。
でも、そこまでは陵辱描写があるバッドエンドを何度も見ないといけません。この物語、ヒロインはふたりしかいないのですが、どう進めてもこのふたり、どこかで陵辱されます。見ず知らずの男たちに強姦されたり主人公に調教されたり、それはそれはひどい目にあう運命。
恋人や婚約者の目の前で犯されながら是非もない快楽に酔うその姿はたしかにエロいような気もするのですが――どうにも、あと味が悪い。こういう作品をプレイするたびに思い知るんだけれど、ぼくは「法(ロウ)」と「混沌(カオス)」なら、完全に「法」の側の人間だな、と。
つまりまあ、何だかんだいって正義が勝たないと気が済まないんですね(笑)。いや、この物語もある種、そういうところがないわけではないんだけれど、途中のエログロ描写があまりにもどぎつい。見ていて辛い。
ただ、Amazonでもわりと好評なことを見てもわかるように、ポルノとしてのエロゲを好きなひとはこれくらいどぎついものを見たいんでしょうね。こういうものを本当の意味でエロゲというんだろうなあ、という気がします。
すごくポルノらしいというか、ポルノでしかありえない表現ではあるのだと思う。ものすごく濃密なルサンチマンを感じる。そういう意味では、最近の萌えエロゲのあっさりした薄っぺらさとは対照的といえるかもしれない。
この手の作品にはある意味、人間の神聖なものにつばを吐きかけるようなところがあって、ただその神聖さも自分で生み出した幻想だから、つまりは自己完結しているんですね。その完結したルサンチマンの環のなかで延々と自分の幻想と睦み合っているというのが、つまりポルノというものの本質なんじゃないか、とぼくは思ったりします。
そういうわけで、ネトリ、ネトラレが平気で、ディープなエロ描写がお好みの方にオススメ。陵辱ものがダメなひとは間違えてもプレイしてはいけません。ぼくはだいぶ辟易しました。いや、エロいことはエロいんだけれど。
この手のダークなエロスに特化したエロゲは、いまどき流行らないと思うんだけれど、でも一定の需要はやっぱりあるんでしょうね。ぼくはしょせんぬるエロゲーマーなので、ぬるい萌えゲーでもやっています。