『バリバリ伝説』から『頭文字D』にいたる道のり。


 『ヤングマガジン』で連載中の『頭文字D』がクライマックスを迎えています。高橋良輔率いる走り屋チーム「プロジェクトD」のたたかいは最終戦を迎え、完結までカウントダウンに入った模様。たぶん、このバトルが終わったあと、本当のラストエピソードに入るんじゃないかな。

 今回、いままであらゆる強敵たちを打ち破ってきた拓海と「プロジェクトD」の前に立ちふさがるのはなんと同じハチロクの乗り手。ハチロクハチロクというなかなかに燃えるシチュエーションです。最後の激闘に期待したいところ。

 それにしても、この連載も長くなりました。1995年開始ですから、今年で16年目ということになります。20年を超える超長期連載がめずらしくない昨今とはいえ、やはり長い部類に入るでしょう。いったい作中ではいま何年の何月なんでしょうね?

 作者のしげの秀一は、バイク漫画の伝説的名作『バリバリ伝説』の連載を終えたあと、『将』、『DO-P-KAN』などの連載を経て、この作品にいたっています。『将』はたしか全3巻の打ち切り漫画なのですが、この作品を振り返るとき、ぼくが思うのは、新しい主人公を生み出すことのむずかしさです。

 『将』は超能力バトル漫画なのですが、その主人公は『バリバリ伝説』と変わらないクールな天才肌タイプのキャラクターで、これが打ち切りに繋がったのだと思います。いちど使ったタイプの主人公を流用しようとすると、マンガ連載は失敗しますね。ほかにもいくつか例があると思います。『北斗の拳』のあとの『CYBER BLUE』とか。

 とはいえ、漫画の主人公というものは、往々にして作者にとっては全身全霊をかけた存在であるわけで、そう簡単に新しいタイプのヒーローを生み出すことができないことも事実。

 『頭文字D』で、『バリバリ伝説』の巨摩とは対照的な、とぼけたヒーローを生み出したことは、しげのさんにとっても会心のことだったでしょう。

 さすがにこのあと『バリバリ伝説』や『頭文字D』に比肩する第三のヒット作を生み出すことは相当むずかしいと思われるので、しげの秀一のキャリアにおいて、『バリバリ伝説』の巨摩郡と、『頭文字D』の藤原拓海はまさに双璧をなすヒーローということになると思います。

 イケメンで天才で帰国子女、ほぼ完璧なヒーローといえる巨摩に対して、拓海の人格造形は、より複雑でひねくれています。ふだんはごく平凡なとぼけた少年のように見えるのに、愛車ハチロクに乗ったときだけは狂気ともいえる天才を発揮する、この斬新なヒーロー像を生み出しえたことが、『頭文字D』のヒットに繋がっていることは間違いなく、仮に『頭文字D』でまた巨摩と同じようなタイプのヒーローを使おうとしていたら失敗したことでしょう。

 そう考えると、ヒット作を複数生み出すということは本当に大変なんだな、とベテラン漫画家たちの偉業に頭が下がる思いです。ベテランでも「生涯一作」というひともいるけれど、それがある意味ではいちばん安全な道なんだろうなあ。どうしても間延びするけれど。

頭文字D(1) (ヤンマガKCスペシャル)

頭文字D(1) (ヤンマガKCスペシャル)

バリバリ伝説 (1) (KCスペシャル (635))

バリバリ伝説 (1) (KCスペシャル (635))