星里もちるの漫画が好きです。ほぼ全作品読んでいると思う。あるいは一、二作読みのがしているものがあるかもしれませんが、せいぜいそのくらいですね。何が好きといって、絵柄が好きなんですけれど。
星里もちるは初め少年漫画家としてデビューし、そのあと青年漫画に移るのですが、その絵柄は(もちろんうまくなってはいるものの)それほど変わりありません。どこまでも漫画漫画した絵柄のままで、リアルタッチの絵になることは遂になかった。ぼくはかれが生み出すほんわかしたキャラクターたちがどうにも好きなのです。
とはいえ、そのポップな絵柄でポップなだけの話を描いていたならば、それだけの作家であったかもしれません。星里さんが描き出す物語は、意外にも時としてきわめてシリアスで、ダークですらあります。
星里さんの漫画でいちばん有名なのは、たぶん『りびんぐゲーム』でしょう。バブル期の東京を舞台に繰り広げられる、仕事と「居場所」を巡る物語。ある意味、バブルを象徴するような作品です。
りびんぐゲーム 1 アパートの部屋貸します (ビッグコミックス)
- 作者: 星里もちる
- 出版社/メーカー: 小学館
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この作品がヒットしたのは、まあ単にヒロインのいずみちゃんが可愛かったから、という理由であるような気もしますがvvそれでもやはり良作といっていいと思う。
しかし、ぼくが星里作品の最高傑作に挙げたいのは『夢かもしんない』。生活に疲れたサラリーマンのもとに昔亡くなったアイドルの幽霊が現れるという筋書きの話ですが、いやあ、これが、いいんだ。
夢かもしんない 1 ハッピーにしてあげる。 (ビッグコミックス)
- 作者: 星里もちる
- 出版社/メーカー: 小学館
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幽霊というファンタジックな題材で「大人になるということはどういうことなのか」というテーマを突き詰めていく手つきのたしかさは手練のものといっていいでしょう。オトナになるということの切なさが30男のぼくには胸に染みます。
その後の『オムライス』とか『ルナハイツ』あたりは、ぼく的には「まあまあ、こんなものか」という出来だったのだけれど、現在連載中の『光速シスター』はいい。ちょっとしたSF要素を絡めて、実の妹(と催眠術で思わせられている女の子)との恋を描くリリカルなラブストーリー。妹がやたらに可愛いです。
- 作者: 星里もちる
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/10/30
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ダークよりの作品としては『本気のしるし』なんてものもありますね。これがまた、壮絶な話で、読んでいると辛くなってくること間違いなしの「欝漫画」。最後は一応ハッピーエンドを迎えるものの、その向こうにあるものがハッピーなのかはさだかではないという――ここらへんの星里さんはとことんシリアスです。
一方、少年漫画時代の代表作としては『危険がウォーキング』、『わずかいっちょまえ』などがあり、『わずかいっちょまえ』は非常に良い話なのでオススメです。む、『わずかいっちょまえ』、Amazonで取り扱っていないぞ。どういうことだ。まあ、売り切れたんだろうけれど。Jコミで取り上げてくれないかな……。
- 作者: 星里もちる
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2003/02
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あ、いま気づいたけれど、最新作『ちゃんと描いてますからっ!』読んでいないや。Amazonでぽちっておこう。
- 作者: 星里もちる
- 出版社/メーカー: 徳間書店
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そういうわけで、メジャーなようなマイナーなような、微妙なラインの漫画家さんなのですが、その作品は読んでみるとどれもおもしろいものばかりなので、未読の方はぜひためしてみてください。
ベテランの実力はあなどれません。