『銀河英雄伝説』という伝説。

銀河英雄伝説~英雄たちの肖像~(1) (リュウコミックス)

銀河英雄伝説~英雄たちの肖像~(1) (リュウコミックス)

 『銀英伝』の漫画版が遅々として進んでいます。通常、この表現は否定形で使うのかも知れないけれど、まあ、この作品に関しては肯定形で使ってもいいんじゃないかしらん。何しろすべて忠実に漫画化すればそれこそ『ONE PIECE』にも匹敵する長さになるであろう物語を、長々と描き続けているのですから。

 「Something Orange」を読んでいる方ならさすがにたいてい読んでいるのではないかと思いますが、原作は田中芳樹の大傑作。ぼくの人生観に膨大な影響を与えた日本SF史上にのこる気宇壮大なスペースオペラです。

 銀河帝国自由惑星同盟、銀河を二分する大国がそれぞれ腐敗した時代を舞台に、ラインハルトとヤンというふたりの英雄の対決を描く、なんて説明しなくても、おそらく皆さん、内容をご存知でしょう。

 未読の方はいますぐ読まれるのがよろしいかと。ひとつ田中芳樹の最高傑作という次元を超えて、後世に語り継がれるべき最大の名作であります。でも、いまの若いひとのなかには読んでいないひとも多いんだろうなあ、きっと。

 さて、その『銀英伝』の漫画化であるわけですが、さすがに原作の密度には及ばないながらも、非常に丹念にコミカライズされていると思います。ただ、進行が遅いことは如何ともしがたい。

 Amazonを見ると、「展開を省略しないで描け」とか「もっと丁寧に描け」といった意見が散見されますが、そんなこといったってさぁ、この上、展開を省略しなかったら完結まで何十年かかると思うよ? いや、何十年どころじゃない。今世紀中に終わるかどうか怪しいと思うよ。

 もともと、この作品、『キャプテン』の連載ですからね。『キャプテン』ってしっていますか? そういう雑誌が昔あったんですね。それから雑誌を移り住んでいまは『コミックリュウ』で連載されているわけですが、『リュウ』に移ってからはたしかに駆け足の展開が続いています。原作をつまみ食いしている感じ。

 原作はそうとう緊密に作られているので、本来ならこういうことはできないんですが、これはもう、読者が原作を読んでいることを前提にして描いているんですね。批判が出ることもわかるけれど、ぼくは前述の理由で仕方ないと思います。

 だって、ふつうにやっていたら終わらないんだもの。いや、この駆け足バージョンでもたぶん終わらないんだけどさ。バーミリオン会戦まで行くといいなあ。おそらくそれくらいなら何とかなるんじゃないかと。

 余談ですが、『コミックリュウ』というのも妙な雑誌で、過去の微妙にマイナーな、しかしマニア受けする作品を発掘してきては連載しているんですね。

 『機神幻想ルーンマスカー』あたりはまだしも、『夕ばえ作戦』なんて60年代(!)のコンテンツですぜ。いや、おもしろいんだけどさ。風祭陽子、可愛いんだけどさ。何かおかしいよね。あの雑誌のなかだけ、時間が歪んでいるみたい。

 懐かしいと感じる作品が増えたことを考えても、自分がオヤジになったことを感じます。今年33歳。そう、奇しくも、ヤン・ウェンリーオスカー・フォン・ロイエンタールが亡くなった年齢です。遅いじゃないか、ミッターマイヤー。