脱暴力のヒーローを求めて。西森博之『鋼鉄の華っ柱』。

鋼鉄の華っ柱 1 (少年サンデーコミックス)

鋼鉄の華っ柱 1 (少年サンデーコミックス)

 もちろん、あいかわらず不満がないわけではないのだが、この頃の『サンデー』は全体としては盛り返してきていると思う。さすがに編集部も危機感を抱いたのかもしれない。以前のどうしようもない停滞感からは脱しつつあるような気がする(まだまだ油断はできないけれどね)。

 で、その『サンデー』を支える柱のひとつともいえるのが『鋼鉄の華っ柱』。元大富豪の少年が零落して貧乏に落ちぶれ、そうしてそこからの逆転をめざす、といった筋書き。第一巻が出たばかりなので、気になるひとは読んでみてほしい。面白いから。

 ヒット作『今日から俺は』の頃からひねた主人公を描きつづける西森さんだが、今回の主人公は飛び切りひねくれている。一応、紳士として生きたいとは思っているし、正義感が全くないわけではないのだが、まず自分の利益を第一に考える男なのだ。

 イケメンで頭脳聡明、運動神経抜群、尋常でなくプライドが高く、決して膝を屈することをよしとしないこの男だが、ストレートなヒーローでは全くない。元金持ちのくせに策士で、性悪で、常に最後には自分の利益にかなうよう物事を持っていく性格である。

 そんなかれがいったいどのようにして失ったものを取り戻していくのか、あるいはいかないのか、注目の新連載だ。

 『今日から俺は!!』の完結後、『天使な小生意気』、『道士郎でござる』、『お茶をにごす』といったオフビートな作品で、ある種、暴力による解決を拒むような異色のヒーローを多数産み出してきた西森作品であるが、今回の作品はそのひとつの解答ともいえる内容になる気もする。

 単純な暴力に頼らないとすれば、けっきょくは頭を使うしかないと思う。その意味で、今回の主人公はいかにも西森作品らしいと思うのだ。

 喧嘩最強、だれにも負けなかった『今日から俺は!!』の三橋は、しかし結局はフェイドアウトするようなかたちで物語から去っていった。その後、西森作品の主人公は現実といかにして折り合いを付けるか、その問題で悩んでいるように見える。

 今回の敵は貧乏という究極の現実。果たして勝ち目はあるのか? 『サンデー』の続きを読むことが少し楽しみになってきた。