『eジャンプ』をタブレットで読む日が来る。


 東日本大震災を受けて、漫画雑誌のネット公開が進んでいる。既に『少年ジャンプ』、『少年マガジン』といったメジャータイトルを初めとして、いくつかの雑誌が公開されている。

 先陣を切って『ジャンプ』のネット公開に踏み切った集英社の英断には拍手を送りたいところだ。『バクマン』を読んでいると無能としか思えないジャンプ編集部も、実際はもちろんそうではないのだろう。たぶん。

 いつの日か漫画雑誌が電子出版される日が来たなら(確実に来るだろう)、先週はその起源として記憶されることになるはずである。

 いつか、それも遠くなく、ネット購読した電子版『ジャンプ』をタブレットPCで読む日は来る。現状の雑誌出版システムが破綻寸前である以上、それは出版社にとっても、作家にとっても、また読者にとっても恩恵をもたらすことになるはずだ。

 何より、再生紙とはいえ膨大な量の紙を毎週無駄に消費することは、エコ時代に全くそぐわない。電子出版は限りなくエコロジカルなのだ。

 さて、漫画雑誌出版の電子化は、漫画にどのような変化をもたらすだろう。とりあえず、より電子化、情報化が進んだ時、漫画は音楽と同じようにアンビエント化するだろう。

 アンビエント化とは、そのコンテンツをいつでもどこでもあたりまえに取り出せること。音楽はiTunesのおかげで既にアンビエント化している。聴きたい曲を聴きたいときにダウンロードして聴く。それがいま主流のスタイルであることは論を待たない。

 それでは、アンビエント化された漫画はどのように消費されることになるのか。当然、音楽と同じことが起こるはずである。つまり、iTunesによって音楽が一曲単位にまで分解され、ジャズやクラシックといったジャンル区分のヒエラルキーが意味をなくしたように、少年漫画、少女漫画といった括りは意味を失うだろう。

 そもそも、いまでも『少年ジャンプ』の読者の何割かは「少年」ではなく、女性なのだから、「少年漫画」は必ずしも「少年」のためだけの漫画ではない。それがさらに進んで、漫画は別の括りで捉えられることになることが考えられる。

 同じ作家が、同じように描いた作品が、少女漫画雑誌に載っているために少女漫画として捉えられ、少年漫画雑誌に載っているたら少年漫画として捉えられる、といったことは、漫画がアンビエント化した末にはなくなるはずである。

 いまはまだ、羽海野チカの『3月のライオン』は『ヤングアニマル』に連載されているから青年漫画であり、『ハチミツとクローバー』は少女漫画雑誌に連載されていたから少女漫画である、というような区分がありえるが、これは過去のことになると思うのだ。

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)

 個人的には、すぐにでも漫画雑誌にはアンビエント化してもらいたい。漫画と電子書籍リーダー、タブレットPCは非常に相性が良いと思うからだ。

 じっさい、iPadで「Jコミ」配布の漫画を読んでいると、おそろしく快適であることに気づく。紙媒体でないため、見開きが非常に綺麗なのである。これが漫画の本来の、自然な読み方なのではないか、いままで雑誌や単行本では、むしろ不自然なかたちで読んでいたのではないか、とすら思ってしまうくらい。

 だからこそ、いつか来る、電子版『ジャンプ』や『LaLa』をタブレットPCで読むその日が、一日も早いことを祈りたい。そのとき、ぼくたちは漫画を、古いも新しいも男性向けも女性向けもなく、ただ漫画として読むようになるかもしれないのである。