15年目の『痕』を読む。


 ひさしぶりに『電撃大王』を読むなど。

電撃大王 2011年 05月号 [雑誌]

電撃大王 2011年 05月号 [雑誌]

 漫画版『紫色のクオリア』がなかなかの出来で、しかもガチ百合漫画なので、非常に俺得。あいかわらずの萌え漫画の山のなかで、『よつばと!』が異彩を放っているのはあいかわらず。相田裕Gunslinger girl』は決定的なポイントを迎えている。この展開は……うーん、どうなんだろ。

 で、個人的に気にかかっているのが月吉ヒロキの『痕』。そう、あの懐かしの『痕』である。

痕 1 (電撃コミックス)

痕 1 (電撃コミックス)

 原作はLeafが1996年に出したゲームだから、今年、ちょうど15年目を迎えることになる。2002年、2009年に二度にわたってリメイクされているとはいえ、これだけの長いあいだ愛され続けているとは、息が長いコンテンツだといえるだろう。大量生産大量消費でコンテンツの寿命が短くなる一方に思えるこの頃、こういう作品が存在していることは嬉しい。

 一応、知らないひとのために説明しておくと、『痕』はある地方都市で起こった連続殺人事件に絡めて、主人公と美人四姉妹との恋を綴った物語。なかなか気宇壮大なSF展開なども含めて、当時としては実験的、野心的な作品だった。

 この作品がのちの作品に与えた影響は膨大なものがあるが、大きく分ければふたつあると思う。地方都市を舞台に選んだことと、伝奇要素を持ち込んだことである。

 前者は『AIR』や『ひぐらしのなく頃に』に受け継がれ、後者は『月姫』や『Fate』を生む。また、それぞれ個性の異なる四人姉妹は、無数のヒロインを登場させることによってあらゆる読者の好みに対応しようとする原題の萌え漫画を予見しているようだ。

 いろいろな意味で先駆的な作品であり、だからこそ今日まで生きのびているわけだ。もっとも、さすがにいまの視点で見ると相当に素朴な物語に見えることは否めない。この15年間で萌えも物語も進歩しているのだと思わせられる。とはいえ、ひさしぶりに見る柏木家の四姉妹はやはり可愛く、また話もおもしろいので、さすがではある。

 ちなみに漫画版の作画を務めている月吉ヒロキは、ロリ&フェチな作品で知られるエロ漫画家。変態的、偏執的、倒錯的な作風で(一部では)有名で、単行本としては『夏蟲』、『独蛾』がある。

 Amazonの書影を貼りたいところだが、探しても見当たらない。どうも削除されてしまったようなのである。何だかなあ。変態と倒錯のかぎりを尽くすめがね少女調教漫画『独蛾』は傑作なので、機会があればご一読ください。

 ただ、エロ漫画時代と比べると、この漫画版『痕』では作画がいまひとつ冴えない気もする。締め切りがきついのかなあ。まあ、一年に一冊も単行本が出ない状況でそれはないと思うんだけれど……。原作は90年代を代表する作品なので、大切に扱ってほしいものである。