森田崇『アバンチュリエ』がおもしろい!


 今日はタイトル通りの話。とはいえいまのところまだこの『アバンチュリエ』という作品をしっている読者は少数派だろう。まだ連載も三話を数えるのみで、単行本化されていないからだ。が、この漫画はおもしろい! 傑作の匂いがする。そこで、先物買いではないが、いまのうちに紹介しておこうという意図である。ま、もっと先物買いが烈しい各漫画ブログではとっくに紹介されているんだけどね。

 作者は先日『ジキルとハイドと裁判員』を好評のうちに(と思う)完結させた森田崇。掲載誌は『モーニング』の姉妹誌『イヴニング』。そうして主人公はかの〈怪盗紳士〉ことアルセーヌ・ルパン。ルパン! いまでは孫の(?)ルパン三世の方が有名かもしれないが、世界的知名度ではやはり群を抜くフランスを代表するヒーローである。紳士にして怪盗、英雄にして咎人、冒険家にして名探偵――千の顔を併せもち、幾多の難事件をときに起こし、ときに解決する男。

 古典ミステリの探偵も多々あるが、自分自身が犯罪者という設定はやはり異色だろう。英国を代表する探偵シャーロック・ホームズとは宿敵の関係にあり、幾度となく渡り合っている。もちろん、これはルブランのかってな創作で、この件についてコナン・ドイルから厳重な抗議を受けた結果、作中の探偵はエルロック・ショルメとなったのは有名な話。ルブランの行為は現代でいえば著作権違反にあたるわけで、ドイルが怒るのは当然だが、ホームズとルパン両方のファンとしてはちょっと残念な気もする。

 このエルロック・ショルメが日本ではシャーロック・ホームズと訳された結果、色々と読者を混乱させたらしいのだが、それについてはウィキペディアをご参照のこと。しかし――どうやら『アバンチュリエ』の世界には、紛うかたなきシャーロック・ホームズが存在しているようなのである。ということは、いつか、そう遠くない日に、本当のルパン対ホームズ、怪盗紳士と天才探偵のあいゆずらぬ対決が見られるのかもしれない。それも楽しみだ。よく見てみたら「小説中の人物」と書かれていますね(汗)。ということはやっぱりエルロック・ショルメなのか。

 ルパンを主役にした物語というと、荒唐無稽な第冒険物語を想像されるかもしれないが、意外にも『アバンチュリエ』は原作に忠実なようである。といってもぼくはいまを去ること二十数年前に児童向けのものを読んだに過ぎないから、原作については詳しくない。これからの展開を楽しく待ちたいと思う。そういうぼくが『アバンチュリエ』を読んで一驚させられたのは、ルパンが意外に若々しく、また子どもっぽいことだ。ルパンといえば大人の余裕という印象が強かったが、じっさいにはこの第一弾の時点では年齢的にも若く、また精神的には幼いとすら云える部分もあるようだ。原作から百年以上を経たこの21世紀の新解釈ルパン。期待は高まる一方なのである。