続・東アジアの歴史ドラマがおもしろい。

韓国時代劇カタログ―全87作品 (Gakken Mook)

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 読み終わりました。いやあ、これは良い本ですね。なんといってもありがたいのが、朝鮮半島の歴史を年表のかたちで追いながら、その時代時代に対応したドラマ作品を配置しているところ。つまり時代順に作品が並んでいることになるわけで、実にわかりやすい。

 読み終える頃には朝鮮半島の歴史について全く無知なぼくでも、多少の知識が身についた気になっていました(確実に錯覚ですが)。さらには各王朝の官位の名前なんかも載っていたりして、まさに至れり尽くせり。ありがたやありがたや。

 未見の作品のなかで個人的に見てみたいのは『宮廷女官チャングムの誓い』『イ・サン』を撮ったイ・ビョンフン監督の新作『同伊(トンイ)』。『イ・サン』では複雑な内面を秘めた老君として登場する英祖の母親を主人公にした話らしい。ま、いずれ見る機会もあるでしょう。

 あと、ここでは取り上げられていないけれど、朝鮮王朝史上最悪の暴君と呼ばれる燕山君を扱った映画『王の男』なども見てみたい。韓国では実に1200万人の観客動員を果たしたというとんでもないヒット作なので(人口5000万人の国で1200万人って、おい)、おそらく傑作なのでしょう。

王の男 スタンダード・エディション [DVD]

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 中華ものドラマなんかももっと見てみたいのですが――いや、金庸原作作品なんかは相当数がDVDで見れるんですよね。だから、贅沢な話ではあるんだけれど、それ以外のものも見たいなあ、と思います。衛星放送とかを使えば何となるのだろうか。スカパーとかか?

 で、まあ、金庸作品を読んだり見たりしているとつくづく思うのですが、漢民族とはなんと陰険なのだろう、と(笑)。そして、遊牧騎馬民族とはなんと格好いいのだろうと。謬見に違いないものの、小説を読むかぎりではどうしてもそう思ってしまいますね。

 後期作品になるほどこの傾向が強くなっていくのですが、金庸の小説には、恐ろしく陰険で陰惨な人物が多数登場します。それはもう、日本人の想像を絶するようなダークさ。大抵それって漢民族なんですよね。草原の騎馬の民はそれはもう颯爽としている。

 そこには何というか「文化の毒」というものの存在が感じ取れます。数千年にわたって熟成された文化というものは、もうそれじたいが毒なんですよね。だから文化レベルが高い国、民族、人物ほど陰険になる(笑)。そういうことなんじゃないかと思うんだけれど。

 まあ、そういうなかでなお清冽な心を失わず、己一身の侠気に従い生きる青少年が主人公を務めている辺りが救いなんですが――それでも幾千年の時を経て中華文明の抱える底知れぬ闇といったものがそこからは窺い知れます。

 アメリカのドラマを見ていると、こいつらどうしてこう口喧嘩ばっかりしているんだ、ひとの話を聞けよ、と思うのですが、金庸の作品には表面上は仲良くしておいて陰で追い落とすことばかり考えているといった人間関係が多数登場し、それはそれは陰険です。

 ただまあ、金庸武侠小説は何しろ半世紀も前の作品なので、あまり参考にならないといえばそうかもしれません。その後も連綿と武侠小説は書き継がれているはずなので、ぜひ傑作を翻訳してほしいのですが――無理なのかなあ。売れそうにないもんなあ。

 台湾の無頼派武侠作家(ヤクザと喧嘩して刺されたりしている)古龍の作品はいっぱい翻訳されているんだけれど、かれの小説はほとんどが時代考証無視のアクション活劇ですからねえ。歴史興味を満たすために読むには、ちょっと物足りないものがある。いや、おもしろいんだけれど。

 日本のライトノベルの影響を受けた「少女武侠」なんてものの存在も聞くものの、まあ、一生読むことはないでしょうね。読んでみたいんだけれどなあ。韓国語はまだしも、中国語はちょっと手が出ない。いや、韓国語だって読めないことに変わりはないんですが。

 で、現代劇も含めて韓国ドラマをいくつか見ていると思うんだけれど、韓国人はやっぱり中国人と比べるとだいぶ日本人に近いんじゃないかな。それはまあ違うところもたくさんあるだろうけれど、根本的なところで親しみがわくところがある。

 とにかくベッタベタの純愛物語を描きこまなくては気が済まない辺りは付いていけないものを感じなくもありませんが、そのラブストーリーもそこまで激しかったりどろどろしている印象はない。だから日本人に受けるのでしょう。

 生まれ変わってはめぐり逢い、そのたびに結ばれず、また別れ――ということをくり返す『輪廻』というドラマがあるらしいんだけれど、これのあらすじを見ていると『久遠の絆』じゃん、と思ってしまう。どこの国でも似たようなことを考えるんだな、と。

 この手の文化交流というものは国境を超えた相互理解に最も効果があるものだと思います。「中国は中華思想だからダメだ」と思うひとは金庸を読んでみればいい。その中華思想が完璧なまでに解体されているところを見ることができるでしょう。

 ま、色々と楽しみなことが多いのでした。