『ベルセルク』と完璧主義の陷穽。

ベルセルク 35 (ジェッツコミックス)

ベルセルク 35 (ジェッツコミックス)

 『ベルセルク』の最新刊が出ていますね。この作品、最近は特に続刊が出るのが遅くなっていて、年に精々一冊読めるかどうか、という感じです。

 そのうえ本編があまりに壮大な展開になっているため、このままではいったいいつ完結するのか、本当に完結することがあるのかどうか、大変心配になってしまいます。

 どうしてこれほど続刊が遅れているのかといえば、べつに作者が遊んでいるわけではなく、どうもその極端な完璧主義に原因があるらしい。

 三浦さんが膨大な量の作画をほとんどひとりでこなしていることは半ば伝説的に語られていることですが、最近はその作業量が幾何級数的に増えているため新刊が出ないということのようです。

 たとえば、甲冑姿の軍勢をひとりで延々描くとか、そういう作業に時間を取られているのだと思しい。これはある種、壮絶な作業ですが、でも、読者としては辛いことともいえます。

 ごく一般的な読者にしてみれば、いくらか作画のぶれがあっても、たとえばどう見てもアシスタントが描いたとしか思えない絵がたまに混じっていても、一定のペースで新刊が出るほうが嬉しいと思うんですね。

 でも、作者としてはそれは赦せないんだろうなあ。決して妥協しない完璧主義はたしかにクリエイターにとって美質ではあると思います。しかしそれが行き着くところまで行ってしまうと、作品が永遠に完成しなくなるわけですよね。

 どんな名作も本当の意味で完璧ではない以上、妥協の産物ということもできる。そういう意味では、完璧主義というものは危険な陷穽だよな、と思わずにいられません。

 『ガラスの仮面』なんかもそういう完璧主義の結果、めったに新刊が出なくなった作品だと思うんですよね。読者はいいからもう、とにかく終わらせてくれ、せめて一年に一度新刊を出してくれ、と思うわけですが、なかなかそうはいかないらしい。

 まあ、三浦さんにしてみれば、半生を費やした作品をいまさら中途半端に終わらせられないということなのかもしれませんが――それにしても、やはりぼくとしてはもっとたくさん『ベルセルク』を読みたい。

 それはまあ、いつまででもついていきはしますけどね。それにしても、この稀有の傑作が未完に終わらないことを祈るしかありません。そこまで完璧じゃなくても十分素晴らしいと思うのは、やっぱり凡人の考え方なのかなあ。