サンプル。


 またちょっと書いてみました。

 第六章「蛇と王冠」

 冠の話をしよう。蛇と冠の話を。その冠は黄金で出来ていて、魔法の力を備えている。否、どこぞの老いぼれた妖術師の作ではない。そのような下らぬ話ではない。

 その冠に魔法を与えているのは、ただ人々の期待と忠誠のみ。それは王冠と呼ばれる冠なのだ。それを被るものは王と名指され、一国を統べる。

 いまから、わたしの知る幾人かの王の話をしようと思う。あるいは、王への道を歩む者の話を。これは限りなき信頼と重責を背負った王たちの物語、そして王を信じ、王に仕えた者たちの物語である。

 いままでの五章では、ある特定の作品を中心に様々な作品を語ってきたが、この章では複数の作品と人物とを通して、王とは何か、いかなるものが王冠にふさわしいのか、その疑問を問い詰めていくことにしたい。

 どのような国であれ、一国に王はただ一人、至尊の玉座に坐すものは特別の人物でなければならぬ。故に王と王の物語を語ることは、特別な人物とは何か、それを語ることでもあろう。

 第五章では国家に潰された一人の少女の悲劇を語ったが、本章に登場する人物たちはある意味で彼女と対照を成す。かれらは、自ら国家の重みを背負うことを選び、王土に暮らす万民のために生きている。かれらこそは義務の奴隷、見しらぬだれかのために生きるものである。

 しかし――おお、そうだ、忘れてはならない、王冠にはいつも一匹の蛇が巻き付いている。〈孤独〉という名の毒蛇。あるいは〈猜疑心〉と呼ばれることもある。この蛇の毒言に耳を化したとき、王は暴君、狂王と呼ばれることになる。この章では、幾人かの暴君のことも語ることになるだろう。

 王道を往く王、覇道を歩んだ王、さまざまな王が登場するが、あなたはだれが最も支配者にふさわしいとお考えだろうか? 読み終えるまでにあなたなりの回答を出していただければ嬉しい。