クロスオーヴァー漫画に可能性はあるか。

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

 今週の『バクマン。』はもう読まれだろうか? 自信の新連載で天才新妻エイジを追いかけるサイコーとシュージンだったが、そこに岩瀬とエイジによるふたりの予想を超える新展開が――という筋。

 この期に及んで後輩作家を突き放しにかかるエイジ&岩瀬恐るべし、というわけで、いったいこの先どうなってしまうのやら、また先が読めなくなってきた。

 で、亜城木夢吐の新作『PCP』を追い落とすべくエイジたちが使ってきた手は作品を超えたコラボレーション。エイジが超人的な執筆速度で同時に連載する二つの漫画のキャラクターをクロスオーヴァーさせるという手法ですね。

 アメコミなんかではよくあることのようだが、日本ではあまり見かけない手法である。すぐに思い浮かぶのは、孫悟空とアラレちゃんが『DRAGON BALL』で共演していたことくらいか。

 いやいや、いまの日本でも作品の枠を超えたコラボを実践している作品は存在する。それが『死がふたりを分かつまで』と『JESUS 砂塵航路』。

JESUS 砂塵航路 1 (ビッグコミックス)

JESUS 砂塵航路 1 (ビッグコミックス)

 サンデー往年の名作『JESUS』の続編である『砂塵航路』と、盲目の剣鬼の活躍を綴った『死がふたりを分かつまで』。

 それぞれ全く異なる世界と物語とを持っていたはずのふたつの作品が絡まりあい、混ざり合い、ひとつの物語を紡ぎ出す――作者同士に親交があったからこそ成り立つ世紀の奇手。

 現在、『死がふたりを分かつまで』には、「護り屋」楯雁人や殺し屋ジーザスが、『砂塵航路』には「エレメンツ・ネットワーク」のマネージャー台場巽が登場している。両作品とも現代東京を舞台にしているからこそありえる究極のコラボレーションといっていいだろう。

 もちろん、こんな展開は『JESUS』構想段階では影も存在しなかったはずで、「後付け」といえばそうだ。しかし、最強の殺し屋と無敵の剣鬼が作品を超えて相打つ――これは、やはり燃える展開である。

 まあ、一歩間違えば作品世界全体をクラッシュさせかねない奇策であることもたしかで、たとえばアガサ・クリスティは、生涯、エルキュール・ポワロとミス・マープルが競演する作品を書くことはなかった。

 が、緻密な設定と構成のもと描かれるのならば、これ以上読者を興奮させる設定もまたないかもしれない。良くも悪くもアメコミのように「何でもあり」ではない日本漫画ではあるが、このようなこころみがこれからも続くことはあるだろうか?

 おそらく、絶無ではないだろう。たとえば永井豪石川賢の作品では、このようなクロスオーヴァーがしばしば見られる。しかし、作者が異なる作品を超えてクロスオーヴァーするということは、やはり稀有なことであるに違いない。

 『死がふたりを分かつまで』も『砂塵航路』も単体として十分におもしろい漫画であるだけに、この展開の行末にはわくわくするものを感じる。はたして、盲目の剣士や最強の殺し屋の物語の果てに待つものは何なのか――。期待は高まるばかりである。