『翼あるもの』。

「巽さん――起きてよ」
「何でもする。云ってくれ」
 巽は火を吹くような目で、透をにらみすえた。こんなふうに、と透は思っていた。一度でも、こんなに、うけとめかねるほど激しく、愛しくれる人がいたら。だが、と何かが絶望的な自嘲にみちて叫びかえした。オレにはその権利はないのだ。

 再読。

 栗本薫全盛期の最高傑作の一つ。

 新海誠の『ほしのこえ』を観に行った帰りに、下北沢の古本屋で買ったのだった。読みかえしてみても、やっぱりいい。この頃の栗本薫の文章には、何かが宿っている。