『新世紀エヴァンゲリオン』の漫画版がいよいよというかようやくクライマックスを迎えている。
新世紀エヴァンゲリオン 12 (角川コミックス・エース 12-12)
- 作者: 貞本義行
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2010/03/31
- メディア: コミック
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基本的には劇場版と同じ物語をなぞりながら、細部を微妙に変えていく手法が見事。まだ完結まではしばらくかかるだろうけれど、その暁にはまだだれも見たことのない結末を見ることができるはず。楽しみに待ちたいところ。
ただ、90年代に始まった連載が10年代に入ってまだ終わっていないという事実には、やはり「何だかなあ」という気分にならないこともない。貞本さんはほかにも色々仕事があるだろうからある程度は仕方ないのだろうけれど、もう少し早く終わらなかったものかな。
もっとも、漫画業界ではこの種の十年以上にのぼる長期連載はべつにめずらしくもないこともたしか。というか、いまおもしろい漫画の何割かは、確実にそういう長期連載作品が占めているといえるだろう。
『ONE PIECE』も『HUNTER×HUNTER』もたしかにおもしろいのだけれど、しかし、その連載がスタートしたのは十年以上も前のことなんだよね。だから、こういう作品を「いま」の漫画の代表作として挙げるのは微妙に忸怩たるものを覚えないこともない。
いつまでも『ONE PIECE』や『名探偵コナン』が雑誌の看板として掲載されていて、あとから始まった連載の人気がそれらに及ばないという状況は、ちょっと寂しい。
いや、『ONE PIECE』はたしかにおもしろい。傑作だ。素晴らしい。でも、ぼくはやっぱり「いま」の空気を感じさせる新しい作品を読みたいのだ。
そういう意味では長期連載にはたしかに弊害があって、作品内容が「いま」からどんどん離れていくんだよね。貞本エヴァをおもしろいおもしろいと読みながら、でもどことなくいまさら感をぬぐいきれないのもそこらへんに原因があると思う。
『エヴァ』のテーマも物語も90年代の感性で織りなされたものであるわけで、いま、それを微修正して見せられてもやっぱりいまさらと感じるよね、ということ。
そういう意味では、ここでいきなりアニメの話になるのだが、『東のエデン』という作品は偉い。現代日本を舞台にして、現代日本でしか生み出しえない物語を展開している。
コンテンポラリー感覚がある、といえばいいのだろうか、まさしく「いま」の物語であって、「いま」でしかその真価を理解できない性質の作品だといえそうだ。こういうものがもっと見たい。
東のエデン 劇場版I The King of Eden DVDスタンダード・エディション
- 出版社/メーカー: 角川映画
- 発売日: 2010/03/24
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神山監督に『攻殻機動隊』の続きを望む向きもあるとは思う。でも、『攻殻』はやっぱり80年代発のコンテンツであるわけで、ぼくはそういう過去作品のリメイクよりあたらしい作品を見たいのだ。
もちろん、新しい作品にチャレンジすることはリスキーだろう。しかし、そのリスクを犯さない限り未来はないのではないだろうか?
『ONE PIECE』や『名探偵コナン』はまだまだ続きそうだし、『ガンダム』とか『攻殻』とかをはてしなくリメイクし続けても、たしかにしばらくはもつかもしれない。でも、それだけじゃやっぱり先細りなんじゃないかなあ。
だから、ぼくは『ONE PIECE』より『コナン』より、『攻殻』より『ガンダム』より『エヴァ』より、それらに匹敵する新作を見たい。それを生み出すことは非常に困難かもしれないけれど、それを達成しなければ未来はないと思う。
安西先生、新しい時代の新しい作品を見たいです。