教科書を超える作品、超えられない作品。

WHITE ALBUM2 -introductory chapter-

WHITE ALBUM2 -introductory chapter-

 そういうわけで、一作日、『ホワイトアルバム2 序章』をクリアしました。まともにエロゲをクリアするのは半年ぶり。いや、これ、おもしろかったよ!

 既にペトロニウスさんのところにもオススメが行っているようですけれど、まず、昨今のエロゲでは出色の作品といっていいでしょう。控えめにいっても今年のベストを争う出来。場合によっては歴史的な作品になるかも。

 こういう空虚な言葉を並べるだけでは本作のよさがわからないかもしれないので、プレイ前とプレイ後の海燕さんの反応をリプレイして見てみることにしましょう。

プレイ前の海燕「『ホワイトアルバム2』か。しょせん高校生の恋愛ものなんてたかが知れているよね。ま、一応やるけどさ。やるよ。やりますよ。一応ね」

プレイ後の海燕「かずさああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

 病院行け、病院。

 ま、海燕さんの病的な反応はともかく、ほんとにいい作品です。選択肢はなく、ただ読み進めていくだけの内容であるにもかかわらず、10時間弱のプレイのあいだ、全く退屈しなかった。敷居さんが書いている通り、教科書通りの秀作ですね。

 ただ、ここから先は愚痴になるんだけれど、あまりにも教科書通りにまとまっていると、何かしらの「崩し」がほしくなるのも事実なんですよね。この作品に教科書、つまり物語の定石を超えるものがあったかというと、まあ、なかったかな、と。

 いや、これ、文句つけているようだけれど、ほんとにすごくいい作品なんですよ。未プレイの人でやろうかどうか迷っている人は――まあ、ペトロニウスさんはともかく――是非やってほしい。珠玉の恋愛物語がそこにあります。

 ただ、いってしまえば「それだけ」であることも事実なんですよね。ここらへん、ぼくはアンピヴァレントなものを抱えていて、ひとが「それだけだよね」というと反発したくなるんだけれど、ひとが褒めていると「それだけだよね」といいたくなるんですよね。我ながら天邪鬼だな、と思いますが、でもほんとにそういう心境。

 いいお話なんですよ。少なくともぼくは前作の十倍は好きですね。三人の男女が、少しずつ、少しずつ親密になっていく。そして、そのなかのひとりがひとりに告白する。そのあと、どうしようもなくあふれ出す想い。嘘と裏切り。

 あらすじだけ抜き出せば一切新味はないにもかかわらず、丁寧に丁寧に積み上げられた細部がこの物語を何か真実なものにしています。ここのところ、小説を読んでも映画を見てもいまひとつはまれない状況が続いていたんだけれど、この作品にはどはまりしました。各登場人物にはなんかもう萌えを通り越した愛しさを感じます。

 でも、それでもなお、その上でいうならもうひとつ、ふたつ、定石を超えるには至らなかったかな、と。もちろん意図的にそうしているのかもしれないし、まだ序章だからこれから超えるのかもしれないけれど、とにかく「超えなかった」という印象を与えることは事実。

 そういう意味で、ほんの少し物足りない作品ではあるかもしれません。ただ、そういったとんがったところだけを先鋭化させていくと、こんどは大衆向けのエンターテインメントではなくなっていくからむずかしい。

 ぼくが求めているものは、大衆向けの普遍性と、実験的、先鋭的な「とんがり」を兼備した作品なのだと思います。一時期のエロゲはそういう作品を許容していたと思うんですよね。そういう作品をこそ求めたい。

 「教科書通り」でかまわないんだ。それだってすごいことなんだから。ただ、ほんの一歩、二歩だけ、教科書を乗り越えてほしい、と願わずにいられない。そういう作品に出逢ったとき、ぼくは絶賛の拍手とともに「傑作」という言葉を惜しみなく送ることでしょう。