『お茶が運ばれてくるまでに』。

 綺麗な本だ。

 なんとなく、お気に入りの包装紙でラッピングして気になるだれかにプレゼントでもしたくなるような、そんな、飛び切り綺麗な一冊。

 その中身はといえば、ほんのりこころに染みこんでくるようなおしゃれな〈掌の小説〉が十八編。これが一々素敵な出来で、ついつい読み耽ってしまう。

 本の分量はわずか九〇頁しかなく、しかも文字がぎゅうぎゅうに詰まっているわけでもないので、あっというまに読み終えてしまうのだけれど、それでも満足できる。すばらしい。

 とくべつ派手な物語があるわけでも、刃のように鋭い警句にみちているわけでもないのだけれど、ひとつひとつの言葉の研ぎ澄まされかたが並大抵ではない。時雨沢恵一という作家を見なおした。さすが、流行作家になるだけある。

 さて、この本、一応、掌編小説集ということになっているけれど、ふつう、こういう本のことは、

 詩集、

 と呼ぶとおもう。

 イラストと言葉が渾然となって迫ってくるという意味で、ライトノベルカッティング・エッジとみることもできるだろう。

 しかし、いずれにせよ、どこにどう分類するかは問題ではない。ここに一冊のうつくしい本があり、十八篇のあまくほろにがい物語がある、その事実に陶然としてしまう。

 あなたが喫茶店の窓辺の席に座り、しずかにこの本をひらくなら、お茶が運ばれてくるまでの数分間は、永遠にすら変わるだろう。それだけの力をもった本である。

 綺麗な、綺麗な、綺麗な一冊。

 ぜひ、読んでください。

 損はさせません。