『アバター』。


 たまにはまともな更新もしよう。

 ジェームズ・キャメロン監督の最新作『アバター』を観てきました。宇宙の彼方の遠い星を舞台にした作品ということ以外、事前情報ゼロで観にいったのですが、非常に楽しめました。

 興行的には『タイタニック』の記録を塗り変えるかもしれないという大成功を記録しているとか。観るまえは何でこんな一般受けしそうにない設定の異星SFが受けているんだといぶかしく思っていましたが、観てわかった。超単純。超明快。全然SFじゃなくて、インディアン&騎兵隊映画でした。

 物語はある元海兵隊員が亡くなった兄の代わりに惑星パンドラを訪れるところから始まります。「アバター」と呼ばれる装置を用い、現地人と同じ姿になったかれは、現地人に溶け込み、その信頼を得ていきます。

 しかし、その裏では現地人を虐殺する作戦が進行していて――と、一応はサスペンスフルに進んでいくわけですが、ここらへん、全く新味はありません。現地の異星人はインディアンで主人公たちは騎兵隊だからです。

 ここがこの映画のおもしろいところで、見かけは最先端のSFXを駆使したサイエンス・フィクションなのに、中身は古色蒼然としたインディアン映画なんですね。しかも悪役の軍人たちはベトナム戦争映画から抜け出してきたよう。もう、批評の必要がないくらい超わかりやすい構図です。

 キャメロンが偉大だと思うのは、この元ネタを隠す気が全くないところですね。ここまで来ると、パクリだとかオリジナリティの欠如だとかいう方が野暮に思えてくる。超単純娯楽映画なのです。

 この作品主人公がインディアンの歴史と文化を学ぶというかたちで一応はポリティカル・コレクトネスに配慮しているように見えるわけですが、けっきょく、主人公は白人で、かれがリーダーになっていくわけだし、白人至上主義を乗り越えているとは思えません。

 でも、それもまた、キャメロンの周到な戦略の一環なのでしょう。だって、『もののけ姫』みたいな複雑な構図の映画作ったって、見るほうが付いてきてくれない可能性高いもんね。

 やっぱり、主人公が演説して、戦争して、敵をやっつけるという、どこかの『インディペンデンス・デイ』みたいな構図はアメリカ人の永遠の燃えシチュエーションなのでしょう。この映画の場合、アメリカンな軍人と資本家が悪役になっているわけだけれど、基本的には同じパターン。

 でも、まあ、皮肉じゃなく、アメリカ人は過去の歴史を反省したり後悔したりするだけまだ偉いよな、と思います。日本で過去の侵略戦争を真摯に反省したり後悔したりしているエンターテインメント映画がどれだけあるでしょうか? 個人レベルの悲劇として戦争を描いているものはいくらでもあるでしょうけどね。

 とにかく劇場で観るべき大作なので、お近くの映画館での鑑賞をお奨めします。シンプルイズベスト。キャメロンはやっぱりエメリッヒより偉いと思います。

The ART of AVATAR ジェームズ・キャメロン『アバター』の世界 (ShoPro Books)