隣の部署の人が、金傭を読んだことがないといったら、それは人生を損している!と叫ばれてしまった。
大いに損しています(キッパリ)。
前々からいっているんだけれど、ぼくは金庸こそ二十世紀アジア最大の物語作家だと思っている。もちろん、アジア全域の物語を読みつくしたわけでも何でもないんだけれど、でも、色々と仄聞する情報をもとに考えると、そうとしか思えないんだよね。
この比類ない大作家が、日本ではいまひとつ知名度が低いことはざんねんでなりません。もっと金庸に光を! もちろん知っているひとは知っているんだけれど、知らないひとは知らないからなあ。
くわしくは以前、「金庸の世界へようこそ。」という長い記事を書いたのでそちらを読んでほしいのですが、いや、すごいよ、おもしろいよ、金庸。
司馬遼太郎とか山田風太郎とか田中芳樹とか栗本薫とか西尾維新とか、そこらへんが好きなひとはぜひ読んでみてください。それぞれ全然個性の違う作家じゃないかって? それが全部入っているんだよ! すごいんだよ! ほんとに!
こう書いてもまだ「中国の歴史小説の大家? 何かむずかしそう」と思われる方もいらっしゃるかもしれない。いや、むずかしくないんだって。ちょうおもしろいんだって。ちょう。
ああ、もどかしい! どうやったらあの痛快無比の世界を伝えられるのか、もう、「ぼくを信じて読んでください」としかいいようがないですね。海燕うそつかない――こともないが、今回は本当。
特に少年漫画が好きなひとは絶対に読んでおくべきだと断言できる。なぜなら、金庸の世界は、まさに少年漫画のエッセンスを濃縮して出来上がっている世界だからだ。
やたらかっこいい必殺技は大量に出てくるし(追魂奪命剣! 降龍十八掌!)、美女、美少女も大量に出てくる(ツンデレもいますよ!)、金庸こそすべての少年漫画好きにとっての理想の作家なのです。
ま、金庸が栗本薫とか田中芳樹辺りと比べて格段に優れていると思うのは、女の子が可愛いところですね(笑)。金庸の諸作品が発表されたのはいまから何十年もまえのことなんだけれど、現代の萌え要素をことごとくきわめている。
特にツンデレ、ヤンデレのヴァリエーションの豊富さは感動的なほど。黄蓉かわいいよ、黄蓉。小龍女っていま考えると素直クールだなあ。何かほんと、現代の萌え文化の隆盛は何だったんだって気になりますね。ええ。
もちろん、単に娯楽作品としておもしろいだけではなく、その思想の深さも並大抵ではない。金庸の作品を順番に読んでいくと、次第に中華ナショナリズムが相対化されていっていることに気づく。それこそ金庸作品最大の魅力なのだ。
本家中国ではだれが一番つよいかとか、だれがいちばん可愛いかといった問題を巡り何冊も本が出ているらしい。日本でも早くそういう状況になってほしいところ。いまならまだ間に合う。この不世出の物語作家を読もう。
入門にオススメなのは、『射雕英雄伝』、『秘曲笑傲江湖』辺り。
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殊に『射雕英雄伝』は金庸の代表作といわれる名作で、くり返し漫画化、映像化されたうえ、最近では何と日本でも漫画になっていたりする。
射雕英雄伝(しゃちょうえいゆうでん) (1) (トクマコミックス)
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それらから読んでもかまわないが、やっぱり何といっても原作!である。よく「池波正太郎はライトノベルだ」みたいなことをいうけれど、それをいうなら金庸はまさにライトノベルの理想形。読まずに済ませるのは損すぎるというものです。はい。