『空の軌跡FC』。


 昨日、ラジオで書くと約束したので、この作品の紹介を書いておこう。本作『空の軌跡』は、『イース』と並ぶ日本ファルコムの代表作『英雄伝説』の第六作である。

 もっとも、物語としては第五作までとの連続性はなく、完全に独立している。

 作品の舞台となるのは〈導力〉と呼ばれる神秘的な力で動く機械〈オーブメント〉による〈導力革命〉が果たされ、半世紀を経たリベール王国。

 一般的なファンタジィとは異なり、オーブメントが外灯で道を照らし、エレベーターを動かし、果ては飛行船まで飛ばす文明的な世界である。産業革命的な世界を描くスチームパンクというジャンルがあるが、それに近いといえるだろう。

 未だ十年前の〈百日戦争〉の爪あとも生々しいこの小さな王国で、プレイヤーは新米遊撃士のエステル及びヨシュアを操ることになる。

 遊撃士とは〈遊撃士協会〉に所属して仕事をこなす人間のこと。その仕事は、荷物の運搬から旅人の護衛、盗難事件の解決まで多岐にわたる。

 彼らは消息不明のエステルの父を探して旅をすることになるのだが、次第に事件は拡大していく。

 さて、ぼくはこれからこの作品を推薦するつもりでいるのだが、実は特に強烈な個性がある作品ではない。いや、むしろいっそすがすがしいほど個性がない。

 物語から、設定から、人物から、何もかもどこかで見たようなものばかり。決してオリジナリティに富んだ作品とはいえない。そういうわけで、オリジナルであることを作品に求める向きはこの作品に失望するだろう。

 主人公であるエステルにしてからが、元気で快活、明るく爽やかだが、それだけといえばそれだけの、どこかで見たような少女である。彼女の幼なじみであるヨシュアも、心やさしくあたたかく、しかし、どこか暗い影を背負った美少年、と決して独創的な造形ではない。

 そういう点だけを取り出せば、かれらは魅力的な人物とはいえないだろう。

 しかし、ぼくはエステルもヨシュアも大好きだ。ゲームをプレイするうちに大好きになったのだ。初期条件は特別個性的でなくても、長い長い物語のなかで、少しずつ明かされていくかれらの高潔さ、清廉さ、優しさ、気高さに、心惹かれていったのである。

 そう、この「物語の力」こそ、『空の軌跡』を特別な作品にしているものである。この作品には、天才的な独創性こそないものの、王道を往く物語の清清しさがある。

 王道。この言葉を軽々しく使うわけにはいかない。真に物語の本道を往く作品だけをそう呼ぶことができる。しかし、『空の軌跡』はまさに王道と呼ぶにふさわしい作品である。

 オリジナリティの欠如など、この作品にとってたいした瑕疵にもなっていないように見える。とにかくすべてが骨太なのである。

 行方不明の父を探し出すためのプライベートな旅は、やがて、国家の命運を巡る壮大な物語へと変わって行く。

 個々の事件の影に垣間見えるなぞの〈結社〉。そして、超古代文明の秘密。ひとつひとつ独立していたように見えた事件は一本の線につながれていくのである。

 RPGにおいてはしばしば設定と物語が乖離し、リアリティを毀損するが、この作品では設定と物語が綺麗に一致していることに感心させられる。

 とにかく、システムの端々にいたる洗練がただ事ではない。戦闘システムのバランスといい、謎解きの難易度といい、隙がない。

 『ペルソナ4』のような歴史的大傑作ではたしかにないが、優等生的秀作とはいえるだろう。

 たしかに本当の意味で特別なRPGとはいえないかもしれない。だが、ここまで細部にいたるまで洗練されている時点で、既に十分特別と見ることもできるのではないか。

 また、その分量。〈クエスト〉と呼ばれるサブエピソードまで含めると、プレイ時間は50時間に及ぶ。そして、さらに物語は後編『SC(セカンドチャプター)』へと繋がっていく。

 『FC』最終章の反転は強烈。これを見てしまえば『SC』をプレイしたくなること疑いなし、である。そしてまた、『SC』も期待を裏切らない作品なので、心配はいらない。これもダウンロード配信で購入できます。