でたらめにさわやかな娯楽大作、『サマーウォーズ』。


 見て来た見て来た見て来たよ!

 『時をかける少女』に続く細田守監督最新作、その名も『サマーウォーズ』、ぼくにしてはめずらしく初日に見に行ってまいりました。

 『時かけ』の監督の新作ということで、ネットでもそれなりに注目され、期待されていると思う。じっさいに出来上がった作品は、これがもう、その期待に違わぬ出来。この夏必見の娯楽大作である。

 まだ『ヱヴァ:破』のリピート鑑賞をくり返している人も、その回数を一回減らしてこちらを見るべき。決して損はさせません。

 物語の始まりは、と、この場合は細々と書くよりじっさいに見てもらった方が早い。ネットに上げられているオープニング映像を見てください。

 見た? 続く本編では、このバイトの中身が明かされる。この美人の先輩のフィアンセのふりをして、長野の田舎、陣内家に乗り込んでほしいというのだ。

 からだが弱った曾祖母を元気付けたいのだと。健二は必死でその大役をつとめるが、その一方、ネットに構築された巨大仮想都市「OZ」には危機が訪れる。

 ある夜、健二のもとになぞの数列を記したメールが届き、その暗号を解読して返信すると、次の日、「OZ」は大混乱に陥っていたのだ。

 何者かが世界一堅牢といわれるセキュリティを打ち破り、「OZ」内部に忍び込んらしい。

 市民生活に深く食い込んだ「OZ」の崩壊は、即ち現実社会の崩壊でもある。たちまち狂いはじめるライフライン。世界各地で大混乱が起こる。

 やがて明かされる犯人の正体。主人公は孤軍、犯人に立ち向かっていく。

「何を始めようっての?」
「合戦だよ」

 孤軍? いや、決してそうではない。かれにはつよい味方がいる。陣内家、総勢二七名の大家族。

 様々な業界で活躍する陣内家の面々の力を結集し、夏の合戦の準備が整えられていく。女性陣が現実的な出来事の対策を練っているあいだ、男性陣がたたかいの準備を整えている描写がおかしい。いくつになっても男の子は男の子、か。

 そして始まる大合戦! ネット上の資産を食い荒らす「敵」とのあいだに、壮絶なバトルがくり広げられる。その規模はやがて人類の存亡をかけたものへと拡大していくのだった。

 とはいえ、そこに格別の新味があるわけではない。仮想現実SFの系譜に連なる本作であるが、その描写はむしろ平凡だ。というか、21世紀を生きるぼくたちにとって、「OZ」はほとんどただの現実である。

 だから、『攻殻機動隊』的なものを求める向きは失望するだろう。しかし、この映画の本質はSF的なセンス・オブ・ワンダーにはない。

 『サマーウォーズ』のメッセージはシンプルだ。ネット時代になっても、人と人との絆が価値をなくすことはない。否、ネットとは人と人との関係性そのものなのだ。

 だから、時にうっとうしく、時に怖ろしいとしても、関係性のネットワークを維持せよ。関係性の第一は家族である。家族を守れ。

 『サマーウォーズ』は家族関係の賛歌であり、ヒューマンネットワークの賛歌なのだ。このメッセージに共感しうるか否かが、この映画の評価を決めることになるだろう。

 押し付けがましい、と感じるひともいるだろうと思う。家族の負の側面を甘く見ている、と思うひとも。でも、ぼくはクライマックスで泣きそうになったね。

 ネットはいまや世界を覆い、何億もの人を直接に繋ぐ巨大な仮想現実の大地を築き上げるに至った。そこにはたしかに負の側面もある。しかし、それは人と人とを固く結びつける力でもあるのだ、ということ。

 この夏オススメの一作でした。

 公式サイト:http://s-wars.jp/index.html