富士見ファンタジア大賞ちょっといい話。


 自分が関わる話を自分で「ちょっといい話」とか書く時点でツッコミどころ満載ですが、ま、でも、ほんとにちょっといい話なので、読んでやってくださいな。

 さて、まずは前提。このたび、ぼくが運営するグループブログ「ライトノベル新人賞に応募しよう!」(id:count-zero)の参加者である入江君人さんが、富士見ファンタジア大賞大賞を受賞されました。

 ファンタジア大賞といえばなかなか大賞が出ないことでその筋では有名な賞です。あの『スレイヤーズ!』ですら大賞は取っていません。その賞をみごと射止めたのだから、これは偉い。すばらしい。賞賛に値する。入江さん、本当におめでとうございます。

スレイヤーズ 1 (ファンタジア文庫)

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 正直いって、ぼくはこのブログからこうも早く受賞者が出ようとは思ってもいませんでした。しかし、入江さんはその予想を軽々と上回ってくれました。運営者として、こんなにうれしいことはありません。

 ま、じっさいには「ライトノベル新人賞に応募しよう!」を開設する前に執筆された作品なので、このブログは全く受賞に関与していないのですが、それでもうれしいものはうれしいですよね。ぼくとは直接の関係がない話ではありますが。

 いや、ところが、そうでもないらしいのですね。実はこの受賞の件を、ぼくは数日前から知っていました。というのも、当の入江さんからこんなメールが送られてきていたからです。これが泣かせる文面なんだ。

 ちょっと読んでみてください。

 メールを送るのは初めてになります。「ライトノベル新人賞に応募しよう!」に参加しております。mana7-seaこと入江君人と申します。

 このたび私、第二十一回ファンタジア大賞、大賞を受賞いたしました旨、ご報告いたします。

 海燕さんには格別のご恩を感じ、発表を先んじてメールしました。

 僕が海燕さんの文章に出合ったのがいつになるのかはもうさっぱり覚えていませんが。ニュースサイトから何度も飛ぶうちにいつしか毎日巡回するサイトの一つになっていました。

 海燕さんは静かな衝撃を僕に与えました。あなたの感想に出合うまで、僕は小説の善し悪しというものがよく分かりませんでした。楽しい小説は楽しく、それ以外は楽しくないという二択でお話を判断していました。まことに無邪気な態度でした。

 でもあなたは違いました。僕が「楽しい」としか言えなかった作品のどこが楽しいのか、またどこがまずいのかをじっと見つめ、最後には新しい読み方まで提示してみせました。

 僕が生涯の作品だとあがめ、楽しんだものを。あなたは何倍も楽しんでいました。

 嫉妬や劣等感すら、抱きました。

 ですがそれからです。僕の読みが広がったのは。僕はまえよりも文章を楽しめるようになりました。展開を楽しめるようになりました。物語を楽しめるようになりました。

 そこには新しい世界がありました。その世界を見せてくれたのはあなたでした。以前、本を読むことも千冊を超えるともはや無邪気なままではいられない。そのような事を書かれていました。僕の場合はあなたの文章に出合うことがそれでした。

 そうして僕は、それを自分でも出力できるのではないかと考えました。考えるだけの日々が数年続き、実践にうつして一年が過ぎ、三作を駄目にして、僕は「日曜の人達」を書き上げました。

 そのころはまだ大賞を取るなどとは夢にも思わず。一次選考を通過すればいいなぁと願っていました。

 そして冬が来てあなたが「ライトノベル新人賞に応募しよう!」の企画を立ち上げました。それまでの僕はいわゆるROMというやつで、あなたから多くのことを受け取りながらなんの反応も返さずに沈黙していました。

 ここで沈黙したままなら、きっと生涯、あなたに感謝の気持ちを伝えることは無いだろう。そう知って。僕は参加を表明しました。

 序章の感想をいただいたことは大きな喜びでした。完成品の感想を貰えなかったことは大きな悲しみでした。(言えよ)

 その日々も、もうあと少しのようです。あのブログに集った一人一人が、みんな別の目的を持っているように(受賞を目指す人、処女作の完成を目指す人、とりあえずの人)僕には僕の目的がありました。

 それがデビューし、あなたに感謝の気持ちを伝えることでした。

 いま、それが叶いました。

 あなたがいなければ、今日の僕はあり得ませんでした。

 本当にありがとうございました。

 ね? ブロガー冥利に尽きる、というものでしょう。

 もちろん、ぼくが日々書き散らしているこの駄文が、それほどたいしたものだとは思いません。入江さんがあたらしい世界を発見できたのだとしたら、それは結局、かれにそれだけの眼力があったからです。

 しかし、その経緯にぼくのブログが多少なりとも影響しているのだとしたら、これはブロガー最高の喜びです。それでは、ぼくが書いてきたことは全くの無駄ではなかったのだな、と思ってしまいます。

 ぼくがこのブログの前身にあたるサイトを始めたのが二○○一年の一月一日ですから、もう八年半も運営していることになります。

 そのあいだ、色々なことがありました。さまざまな出逢い、喜び、恥をかいたこともあれば、失敗したこともあります。しかし、そのすべてが、無駄ではなかったのだと、いまあらためて思います。

 ひととひととのかかわりとはこういうものなのでしょうか。その日その日、あるいは何気なく、あるいは真剣に、書き綴ってきた文章が、時空を超え、はるか何百キロ彼方のひとに、その人生に、多少なりとも影響を与える。この世のふしぎに打たれます。

 ぼくはこれからもブログを書き続けるでしょう。おそらく十年後、二十年後も、何らかの形でこの電子の蜘蛛の巣に文章を発表しているに違いありません。それはきっと新たな出逢いをもたらしてくれるはずです。

 ひとに縁あり。ネットには心がないというひともいるけれど、決して決してそんなことはありません。心をこめて書いた文章なら、きっと伝わるものなのです。ぼくはいま、自信をもってそういいきることができます。想いは、届くのだと。

 さて、「ライトノベル新人賞に応募しよう!」では、受賞者は参加者に焼き肉をおごる、というならわしがあります。ええ、ならわしというか、ぼくが考えただけなんですけれど。

 こうなったらおごってもらわないわけにはいきません。そこで、八月か九月にでもお祝いの会を開こうと思います。ただ、さすがに一方的におごってもらうだけでは心が痛むので、入江さんには何かプレゼントを贈る予定です。

 どうせなら、何か途方もなく役に立たないものがいい。コスプレAV一式、ということも考えたんだけれど、そうだな、『こち亀』全巻セットなんかもいいですね。もちろん、郵送ではなく、自力で家まで持ち帰ってもらいます。何という迷惑!

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 ああ、その日が楽しみです。その日は、ぼくにとっても記念すべき日になるでしょう。ブログをやっていて良かった。文章を書いてきてよかった。想いを伝えることを、あきらめずにいてよかった。本当に、本当によかった。

 もちろん、今回の話はぼくの手柄などでは全くありません。ただ、ひょっとしたら、化学でいう触媒の役目を果たしたのかもしれない、とうぬぼれてもいいのではないでしょうか。触媒は、それじたいは変化せず、化学反応の速度を速めるのです。

 これからもこのブログがよき触媒となる日が来たらいいな、と思いつつ。富士見ファンタジア大賞にまつわるちょっといい話♪でした。

 いや、だから、自分でいうなよ。

DRAGON MAGAZINE (ドラゴンマガジン) 2009年 09月号 [雑誌]

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