恋はあの子も可愛くしてしまう。


 鈴木さんからのメール。

 こんにちは。はじめまして。

 いつも楽しく拝見させて頂いています。鈴木と申します。

 「恋が女をダメにする」の記事、大変興味深く読ませて頂きました。

 私見ですが聞いていただけたらな、と思い、初メールさせていただきました。

 魅力的な女子キャラクターが恋愛をするとダメになる、というお話ですが、私は恋愛と部活を両軸にして展開している「ちはやふる」の千早が成長して、ニュータイプのヒロイン像になることを期待しています。

 少女マンガと少年マンガの見事な融合(と個人的に思っています)である「ちはやふる」では、最終的に千早が、恋愛対象である新と対戦するのではないかと思っておりまして。

 最新刊や連載を読んでいないので、もしかしたら方向性に勘違いがあるかもしれないですが、結果、千早を勝たせるか、新を勝たせるか、また、そこまでの部活の道のりと恋愛の道のりをどう描くかで、新たなヒロイン像を創造できるかどうかが決まるのではないかと。……ちょっと大袈裟な言い方でしょうか(笑)

 私が女だから感じることかもしれませんが、「ちはやふる」を読んでいると、男性社会における女性の戦い方の葛藤とか悩みとか、そういったものが、作者である末次さんの創作の原点にあるような気がするのです。

 日本の男性社会の中で、女が男みたいに戦うことはできるの?

 女が男と戦い、認められるには、恋愛をしちゃいけないの?

 という問いかけが根底にあるんじゃないかと思うのです。

 こういった現実の問題に、漫画という媒体で真っ向から答えようとした作品であると思うのですが、海燕さんはどう思われますか?

 それと、既存作品で女子キャラが弱い作品が多いのは、どんなに優秀でも、最終的には恋愛に傾いてしまう女性を、世間が望んでいたからではないかと思います。

 あくまでマスの需要というお話になりますが、バリバリに仕事ができる女性というのは、えてして男性より合理的で非情だと思いますし、あまり共感されやすいキャラクターには設定しづらいのではないかと。

 勝手な憶測で、作品例も何も思い浮かばないのですが、何か記事ネタに使っていただければ幸いです。

 今後も海燕さんの記事を楽しみにしております。

 では。

 ぼくとしては、『ちはやふる』にかんしてはいまの段階では何ともいえないかな、という感じですね。

 たしかにこれからの展開によっては革新的な作品になるかもしれませんが、千早と新が対決するのはそうとう先の話でしょうから。可能性の萌芽は感じる、といったところでしょうか。

 どうでもいいけれど、ぼくは新より太一の方がずっと好きです(笑)。あれは切ないよ!

 男性と女性が対等にしのぎを削る世界での恋愛を描いた作品というと、『モンキーターン』が思い浮かびますね。

 ただ、あれはちょっとそこら辺を巧く描けているとはいいがたいので、今後出て来る作品に期待したいところです。

 さて、「男性より合理的で非情」な女性人物というと、『図書館戦争』シリーズの柴崎麻子が思い浮かびます。ちょうど、別のメールで柴崎の名前を挙げていた方がいらっしゃいました。

 失礼して、その部分だけを取り出して引用させていただきます。

 はじめまして、いつも楽しく拝読しています。

 私は少年・少女・青年漫画、そして本も好きな女です。

 先日の「恋が女をダメにする。」を拝読して図書館戦争の柴崎麻子というキャラクターを思い出しました。

 初めは明晰な頭脳と、優れた判断力、本人も出世に無関心ではないという描かれ方だったためこれは図書館組織のトップにまで上り詰めるに違いない!と勝手に妄想していました。

 ですがその後、恋に落ちてしまった彼女は女性としての魅力・可愛らしさはクローズアップされつつも優秀な人材としての部分は若干色あせてしまったように思います。

 個人的に「謀略と出世街道ばく進の日々!」というようなお話も読んでみたかったなと少しだけしょんぼりしたことを思い出しました。

 海燕さんのおっしゃるとおり、一国、一つの大きな組織を動かすほどの男性と対等の魅力をもった女性は少ないのかもしれませんね。

 ぼくもほぼ同感ですね。柴崎は「必要があるなら誰とでも寝れる」とうそぶく聡明かつ合理主義的な女性だったのですが、同僚の男と恋に落ち、変わって行きます。で、『別冊図書館戦争2』のクライマックスで決定的な場面を迎える。

 以下、ネタバレ引用(クライマックスすぎるので隠しておきます)。

「あたしを大事にしてくれて、あたしが大事にしたいような人は、あたしのことなんか見つけてくれなかったっ!」
「俺が見つけた」
 手塚が囁いた。
「自信家で皮肉屋で意固地で意地っ張りで大事にしたいお前のこと、やっと見つけた」
 うわあ、と自分でもびっくりするほどの泣き声が漏れた。
「大事にして――大事にして大事にして大事にして! あたしもあんたのこと大事にしたい!」
 手塚の手がゆっくり柴崎の背中を叩く。まるで子供をあやすように。
 さっきの男に弄ばれていたのとは論外の、そして今まで付き合ってきた男の独りよがりな触り方とも論外の、大事にされていることを認めざるを得ないような仕草と力加減。
「分かってるから。その代わり、もう前みたいなこと絶対言うなよ」
 前、みたいなって。
 しゃくり上げながら訊くと、手塚は柴崎と目の高さを合わせて少し怖い顔をした。
「必要あったら誰とでも寝られるとか。あのときは笠原が怒るんじゃないかって言ったけどな」
 俺だって怒りたかったよ、と手塚は叱った。
 柴崎は頷いてまたぼろぼろと涙をこぼした。

 うーん、いや、まあ、可愛いんだけどさ。柴崎麻子といえど恋愛が絡むとこうなってしまうのか、という感がなきにしもあらず。

 「謀略と出世街道ばく進の日々!」、読んでみたかったですねえ。有川さんはよほどのことがない限りそういうものは書かないでしょうが。