- 作者: スエカネクミコ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/05/29
- メディア: コミック
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いや、これは傑作かも。
まだ既刊2巻しか出ていないので、傑作!と断言するわけには行かないが、最近、ここまでわくわくする設定の漫画はめずらしい。
あらゆるアイディアが出つくした現代にあって、なるほど、この手があったか!と膝を叩く発想の作品はそうはない。そういう意味で、少なくとも貴重な作品だとはいえるだろう。
物語は、セントクレイオ学園と呼ばれるとある学校から始まる。この学園が他のあらゆる学校と違うのは、通っている生徒たちが皆、過去の偉人のクローンであること。
その面子たるや、ジグムント・フロイト、フローレンス・ナイチンゲール、アルバート・アインシュタイン、ジャンヌ・ダルク、一休、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、卑弥呼、ナポレオン・ボナパルト、西太妃、そして、アドルフ・ヒトラー、など錚々たるもの。
かつて世界を睥睨した偉人たちが一同に介し、ただの一学生として学園生活を送っているのである!
偉人のクローンというアイディアそのものはそれほど斬新なものではないだろう。しかし、その偉人たちをひとつの学校に押し込め、学園ものを展開するとなるとやっぱりわくわくする。
その昔、宇宙の秘密を解き明かした天才や、ヨーロッパを征服した覇王が、いったい新たな人生で、いかなる道を歩んでいくのか? 気になるではないか。
アインシュタイン辺りはまだしも、卑弥呼や一休のクローンなんてどうやって作ったのかと思うが、そこらへんはいいっこなし。
そして、当然の如く、このクローンたちの学園には何やら陰謀の匂いがする。第一話の時点で学生たちの先輩であるJ・F・ケネディが「再度」暗殺されるという不穏な開幕といい、クローンの皆殺しを計画するなぞの組織の存在といい、一筋縄では行きそうにない。
どこまでサスペンスが盛り上がっていくのか、期待する価値は十分にあると見た。続刊も買うぜ!
と、こう書くと、いかにもハードな物語を想像されるかもしれないが、ギャグやサービスシーンも盛り込まれていて、意外と取っ付きやすい。
フロイトが案外スケベだったり、エリザベスがオリジナルが未婚に終わったことを気に病むあまり結婚願望を抱いていたり、とクローンたちはキャラが立っている。いまふうのキャラ萌え漫画として読んでも十分楽しい。
物語の鍵となるのはクローンの生徒たちがあくまでクローンであるに過ぎず、オリジナルそのものではない、という点にあるのだろう。
オリジナルが成し遂げた偉業を再現することを求められることは、クローンたちにプレッシャーとなってのしかかっている。はたしてかれらがそれを乗り越え新たな個人としての人生を完遂できるのか、それともオリジナルが辿った「運命」を超えることはできないのか、期待は高まる。
とにかく先の展開が楽しみな作品である。一読して損はないと思いますよ。