連珠。

鷺と雪

鷺と雪

 佳麗。

 北村薫の作品世界を、ひと言で表すなら、そういう形容がふさわしいかもしれない。

 一語一句に至るまで、端正に研き抜かれた言葉遣いといい、たおやかでありながら凛とした空気といい、余人の良く模倣しうるところではない。

 本書『鷺と雪』は、その北村の最新長編。昭和初期の帝都を舞台に様々な事件を綴った〈ベッキーさん〉三部作の完結編にあたる。

 もちろん、謎を解き明かすのは、女子学習院に通う士族令嬢の英子と、彼女の運転手〈ベッキーさん〉の二人組。果たして二人を待つ難事件とは?

 物語は、「不在の父」、「獅子と地下鉄」、そして、表題作「鷺と雪」の三作から成る。

 三本の中編を数珠繋ぎにして一本の長編を形づくっているわけだが、前作『玻璃の天』も、前々作『街の灯』も、やはりその構成を採っていたから、この連作は合計九作で構成されることになる。

街の灯 (文春文庫)

街の灯 (文春文庫)

玻璃の天

玻璃の天

 それぞれが、珠玉、と形容していい出来栄えの作品であるが、その珠玉を九つ連ねてみると、さらに面白い。物語の魔術だ。

 本書一冊でも完結してはいるものの、やはり、『街の灯』から続けて読むべきものだと思う。未読の方はまず『街の灯』をお読みください。幸い、既に文庫化されています。