本当の仲良しは、仲良く見えない。


 すでに一○○時間以上プレイしているのですが、まだ『P4』という夢から醒めません。楽しい、楽しい、楽しいゲームでした。足立×堂島もいいけれど、クマ×ジュネスもいいよね!

ペルソナ4

ペルソナ4

 で、ぼくがこの作品でいちばん感動したのは、物語の本筋とは関係ない家庭教師のアルバイトの話だったりします。

 主人公がある小生意気な少年の家庭教師を引き受ける話なのだけれど、展開が進んでいくと、初めはひたすら生意気だったこの少年が、しだいに心をひらいてくれるのです。

 そして、かれの誕生日に、主人公は仲間を呼んでお祝いをひらくことになる。そのとき、ぼそりと「生まれて良かったのかな」と呟く少年に対し、まわりの面子は口をそろえて「バカ」というんですね。生まれてきて良かったに決まっているだろ、と。

 これがね、胸に迫った。ちなみにこの場面、ニコニコで見れます。

 ええ話や。

 「バカ」というのはもちろん罵倒語なのだけれど、使い方によってはなまじきれいな言葉より胸にひびく。こんなふうに率直に、そして愛情をこめて「バカ」といってくれる人間は貴重でしょう。

 これ、ペトロニウスさんが書いていることとも通じる話なのではないかと。

距離の取り方の問題や、欠点など、社会人が、社会の場で、「注意してくれる」ことはほとんどない。

時がその人を孤立させ、丸裸にし、解雇される…ただそれだけだ。

もちろん極端なモデルだが、社会というのはそういうところ。自分で気づくしかないのだ。だから、本気で言ってくれる友人やアドバイスをくれる人は、大切にして、いつも耳を心と接続させて聞いていかなければならない。そして、そうやって本気で接してくれる人ほど人は遠ざけてしまうものなんだけどね。

 つまり、自分にとって最も大切な人間とは、かならずしも耳に心地よいことを囁いてくるひとではないということですね。

 以前から考えていたことなのだけれど、「仲良しがきわまると、一見、仲が良さそうに見えなくなる」ということがいえると思います。

 田中芳樹の『銀河英雄伝説』に、「友達甲斐のない奴だな」というオリビエ・ポプランに対し、友人のイワン・コーネフが「友達? だれが?」といいかえす場面があります。これ、逆説的だけれど、本物の親友だからこそいえる台詞ですよね。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

 ようするに、「本物の仲良し」とは、必ずしもただ心地よいだけの関係ではない、むしろ本当に親しくなくてはいえないような皮肉や、軽口や、悪口を平気でいいあえるような関係であることも多い、ということではないかと。

 落語家立川談春の『赤めだか』(名著)に、弟弟子でありながら先に真打になった立川志らくと、談春のやり取りが載っているのですが、これがおもしろい。

 志らくは真打昇進試験の会で、見事に談志(イエモト)から合格をもらった。
「おめでとう。良かったな」
 と談春(オレ)が声をかけたら、志らく(アイツ)は、
「ありがとう。君も頑張ってね」
 と笑いながら答えやがった。
「殺すぞ、この野郎」
 と談春(オレ)も笑いながら云ったら、周囲(まわり)が凍った。どうもこの種の洒落は通じないらしい、という現実に談春志らくの方が驚いた。

赤めだか

赤めだか

 談春志らくは青春時代をともにした兄弟弟子です。そういう本当に親しい間柄だからこそできる丁々発止のやり取りは、傍から見ると喧嘩しているようにしか見えないんですね。

 そこで、「本物の仲良しは、仲良く見えない」という逆説が成り立つわけです。これ、ぼくの経験則的にも真実だといえると思う。

 少なくとも男同士の関係では真実だと思うけれど、女性同士はどうなのだろう。ぼくはまだ女性になった経験がないので、ちょっとそこまではわかりません。ただ、性別の問題ではないという気もするんですけどね。

 槇村さとるの名作『おいしい関係』のクライマックスで、別れた男の子供を身ごもった女性が、親友に相談する場面があります。彼女は一瞬絶句したあと、堕ろしなさい、というんですね。

おいしい関係 1 (YOUNG YOU漫画文庫)

おいしい関係 1 (YOUNG YOU漫画文庫)

 いまのあなたには早すぎる、予想外のトラブルはいくらでも起こる、あなたにまず必要なのはまず恋人!と、滔々とまくし立てる。これ、本物の友人じゃなきゃいえない台詞だと思うんですよ。

 ひととひとの関係には、単なる綺麗事の「仲良し」を超えた領域がある。そういう関係って、萌えるよね。『P4』はそんなのばっかりで、それはそれは萌えます。