常識という名の思考停止。


 ボーイズ・ラブ小説を多数抱える堺市図書館が、その蔵書を処分しようとしたことに対し、住民監査請求が行われたらしい。代理人代表は「あの」上野千鶴子東大教授。請求の趣旨は、以下の通り。

堺市立図書館において、本年2008年7月頃、市民や市議らの強い要求を受けて、特定の図書が開架から排除され、廃棄処分されようとしている。しかし、それは許されない違法な行為であるから、速やかに当該排除、廃棄行為を中止しもしくは現状復帰すべきである。
 請求人は、すべての市民の知る権利、学ぶ権利を保障するために資料収集・提供を行い、市として全国屈指の図書の充実をはかってきた堺市の図書館を誇りに思いつつ、どんな種類の図書についても、著者が誰であろうと、出版社がどこであろうと、基本的に排除は許されないとの観点で住民監査請求を提起する。

 今後の展開が注目される。

 この件については、すでに良質な記事がいくつも書かれているので、ぼくがあらためて付け加えることはない。興味がある方は以下の記事を参照してください。

http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/e/77f7ec5e6b2c5f9680e1ce3894269ce0

http://blog.goo.ne.jp/teramachi-t/e/248497f9024264b314b9f0770f0ee6af

 飛ぶ気がないひとのために一応まとめておくと、ことの発端は7月。「市民」を名のる男性が図書館が大量のBL本を抱えていると苦情の電話をかけて来たことらしい。

 その「事件」がネットで話題になったのが9月。抗議の内容と図書館の対処に対し、論争が巻き起こる。そして、いま、ついに住民監査請求に至ったわけである。

 じっさい、堺市が5000冊を超えるBL小説を蔵書していることは事実らしい。5000冊というと大量に思えるが、堺市図書館は全国でも屈指の大図書館で、その蔵書数から考えると、とくに大きな数字とはいえないという指摘もある。

http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20080911/1221128343

 知らないうちにBL小説は巨大市場を形成するに至っていたんだね……。

 ま、それは余談だけれど、ぼくももちろん堺市図書館の対応に反対する立場に立つ。それこそ『図書館戦争』じゃないんだから、匿名の声ひとつで蔵書の廃棄を決めちゃいけないだろう。

図書館戦争

図書館戦争

 それにしても、考えさせられるのは、ネットでの議論において、処分賛成派がしばしば「常識」という言葉を使っていることである。

 なるほど、「公共の図書館にいかがわしいBL本なんて置いてはいかん!」という意見は、いまの社会では「常識」であるかもしれない。しかし、「常識」かどうかということと、正しいかどうかということは別のことだ。

 たとえば、南北戦争以前のアメリカでは、黒人は奴隷として使役してもかまわないという考え方は「常識」だっただろう。しかし、その「常識」に疑問を抱き、「常識」を打ち破っていった人たちがいたからこそ、黒人が大統領に選出される今日があるのだ。

 「常識」だからそうなのだ、という意見はしょせんは思考停止に過ぎない。「常識」とか「良識」の皮をかぶった思想ほど危険なものはないのである。