『菜の花の沖(6)』。

新装版 菜の花の沖 (6) (文春文庫)

新装版 菜の花の沖 (6) (文春文庫)

 読了。

 大河商業小説『菜の花の沖』全六巻、堂々の完結である。

 数知れぬ出逢いを経て大商人にまで成りあがった嘉兵衛は、いよいよ蝦夷地(のちの北海道)開発に力を注いでいく。

 未開の函館に膨大な商品を運びいれ、その地を開発したのは、ほかならぬかれだったのだ。

 この土地にやがて五稜郭が築かれ、土方歳三らが立てこもり、幕府最後の地となるのだと思うと、なかなか感慨深いものがありますね。歴史だなあ。

 さて、この巻ではいよいよ嘉兵衛のロシア拉致が綴られる。些細な偶然から、南下して幕府と接触した捕虜となったかれは、独力で幕府とロシアの間を取り持つことを決意する。

 一捕虜の身でありながら、ロシアと交渉し、かれらの信頼を獲得、そして中立の立場で幕府とも交渉するのである。

 言葉が通じないのはもちろん、いままでその存在すらろくに知らなかった国との、文字通り命がけの交渉、これを成功裏に導くのだから、おどろくべきタフ・ネゴシエイターぶりといわなければならない。

 自由経済が勃興しつつあった時期に活躍した上方商人の面目ここにあり、というところか。

 嘉兵衛がいよいよロシアに連れ去られるということになったとき、その場にいた全員が、「自分も連れて行ってくれ」と嘉兵衛に頼み込む場面は感動させられる。

 行けば二度とは帰れないと知りながら、それでも連れて行ってほしいと頼むのだ。こういう人間関係が築ければ、そのひとの人生は大成功といえるのではないか。

 さて、次は『世に棲む日日』だ!