今年最高の短編漫画は(たぶん)これだ!

Boichi 作品集 HOTEL (モーニング KC)

Boichi 作品集 HOTEL (モーニング KC)

 と、タイトルで断定してしまったわけですが、いや、じっさい、この本(の表題作)は傑作。SFでしかも短編集という二重苦を背負っているので売れるかどうかはわかりませんが(きっと売れないと思う)、とにかく傑作。

 何しろあの読書オタクの梁山泊として高名な『BAD_TRIP 特装版』でもきっちり絶賛されている。

「だってさ、既に完結している作品が、面白いはずないじゃないか。『この先どうなるんだろう』という先の見えないドキワク感があってこそ、マンガを読む楽しみがあるワケなんだし。まったく、ラノベ読みのくせに、そういうところを判ってないんだなぁ、平和さんは」

 あ、間違えた。

 それで『Boichi作品集HOTEL』の紹介なのですか。でもこれ、お茶を濁すなんてレベルのものでは全くないですよ。完全に、今年刊行されたマンガ作品の中においても、最上級レベルの品質の一冊ではないかと思いますけど。

 全くその通りで、本書は今年の漫画界の収穫を語る際、欠かすことの出来ない一冊だといえるだろう。ま、一般人は欠かしても良いかもしれないけれど、SF者は絶対に欠かしちゃ駄目。

 この短編集の表題作は大半の活字SFを軽く引き離す2008年屈指の名作である。ぼくはいまはただのアイマスオタだけれど、昔はSFファンだったのでわかるのだ。いや、ほんと、おもしろかったなあ(しみじみ)。

 先ほど雑誌掲載時から2年ぶりに再読したときもそう思ったから、やっぱり傑作だと思う。この一作だけでも値段ぶんの価値は十分にある。だまされたと思って読んでほしい。

 続いて僅差で続くのが2作目の『PRESENT』。最新医学の恩恵を受けて生き返った妻。しかし、彼女はたった3日間しか生きられない身体なのだった、というウェットな物語なのだけれど、どんでん返しが効いていて、泣かせる話に仕上がっている。

 続く『全てはマグロのためだった』は『HOTEL』の感動を見事に台無しにするバカSF*1

「3作目の『全てはマグロのためだった』はどう? 俺はこの作品、バカバカしくって大好きなんだけど。くだらない内容を高いレベルで実現させるとこうなる、ってな見本だよな、これ。地球から絶滅したマグロを求めて、捜索したり創作したりするおバカな天才の一代記。いや、本当にギャグとしてよくできてるぞ」

 そうかなあ。ぼくはこのひと、あんまりギャグ方面には進まない方が良いと思ったけれど。『サンケンロック』でもギャグのところだけ浮いているし。

 その次の『Stephanos』は何を書いてもネタバレになるタイプの作品だから、沈黙を守ることにする。

 ま、そういうわけでとにかく表題作は問答無用の傑作なので、この作品を読むためだけでも買うべきでしょう。

*1:褒めています。