丸戸シナリオ、その優しくも生ぬるい世界。

この青空に約束を- 通常版

この青空に約束を- 通常版

 現在、プレイ中。

 「美少女ゲームアワード2006」で、大賞、シナリオ賞、ユーザー支持賞、純愛系作品賞、主題歌賞を独占受賞したというなかなかすごい作品。わりとおもしろい。

 作品の舞台は大海原に浮かんだ絶海の孤島、南栄生(みなみさこう)島。その昔はにぎやかだった島も、いまでは過疎化が進み、主人公・星野航(ほしの わたる)が通う高見塚学園の生徒たちも減少する一方である。

 そんな島のとある高台に、学園の旧校舎を改造した学生寮「つぐみ寮」は存在した。生徒数の減少に伴い翌年の廃寮が決定されているこの寮に通う生徒は、航をふくめてわずか6名。航以外はすべて女生徒だった。

 この過疎の島唯一の寮を舞台に、航と5人の少女たち(+教師1名)の1年間の物語が始まる。

 と、あらすじを書いてみるとあらためてわかる通り、エロゲとして新鮮な要素はほとんどない。

 過疎の町を舞台にするのもスタンダードだし、ヒロインたちの性格設定も普通。運動神経抜群で成績はいまひとつの主人公像も平凡。この作品だけの個性といったものはほとんど見当たらないといって良い。

 しかし、だから退屈かというと、これが、そうでもない。シナリオの攻略に不要な要素を極限まで排除したシステムの快適さもあるが、やはり最大の功績は丸戸史明のシナリオにあるだろう。

 いや、うまいね、このひと。狙うべきところは狙い、外すべきところは外す、その軽妙洒脱な語り口は、オリジナリティの欠落を十分におぎなっていると思う。なるほど、これがうわさに聞く丸戸シナリオか。

 ただ、それ以上のものが何かあるかというと何もないことも事実で、とくに褒めるところがあるわけではない、ともいえる。良くも悪くも良質のエロゲ。ただそれだけの作品ですね。

 この作品の最大の魅力は、主人公とヒロインたちの仲のよさだろう。主人公とヒロインだけではなく、ヒロイン同士も何とも仲が良いのである。それは「1年後に廃寮が決定している寮」という設定によって最大限に活かされている。

 いわゆる「仲良し空間」ものとしてみると、ぼくの知るかぎり、最高水準にあるといっていい。その寮に主人公以外の男性がいないところがどうしようもなくご都合主義なのだが、ま、エロゲだから良いか(個人的にはせめてもうひとりくらい男性人物を加えても良かったと思うけれど)。

 しかし、それはつまり、深刻な対立や対決が存在しないということでもあり、シリアスな人間ドラマとしての魅力は欠けている。たとえば、『家族計画』辺りの真剣さと比べると、やはり生ぬるい。

 ただ、こういうものが好きな人がいるということも、まあ、わかる。ひととひととが深刻に憎みあったりいがみあったりする世界よりも、優しく支えあうぬるま湯の世界を愛するひとは多いだろう。

 それで何が悪いというわけでもない。ただ、そこには明確な限界がある、というだけのことだ。

 1本1本のシナリオがあまり長くないこともあって、作品の印象は強くない。よく出来た、しかしそれだけといえばそれだけのエロゲである。女の子たちはキュートに描けているんだけれどね。

 さえちゃんかわいいよさえちゃん。