『ヴィンランド・サガ』がおもしろい。

ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)

 いや、ほんと、おもしろくてたまらない。

 いまを去ること数百年前、北方で活躍したバイキングたちの物語である。荒々しく、野蛮で、しかし力強いバイキングの生き様が見事に描き抜かれている。

 作者は『プラネテス』の幸村誠

プラネテス(1) (モーニング KC)

プラネテス(1) (モーニング KC)

 宇宙SFから歴史ものへと、一見すると全く別の世界へ転身を図ったかのようだが、その実、どこか内省的な作風は『プラネテス』と共通している。

 内省的といっても、決して地味な作品ではない。むしろ、ひたすら戦闘が続くという意味では酸鼻な物語といえるだろう。

 リアリスティックなタッチで描きこまれた戦闘場面は、圧倒的な迫力。文明的に劣悪な状況の中世社会で、はてしなく打ち続く戦争が、迫真の感覚で描かれている。

 しかし、それでもなお、この作品の本領はその思索性にあると思う。愛とは何か? 神とは? なぜひとはここまで苦しまなければならないのか? 作者は物語を通して考えていく。

 いずれ、その思索の果てに、タイトルにある幻の楽土「ヴィンランド」が登場してくるのだろうが、その日はまだ遠い。ひょっとしたら、10年も先のことになるかもしれない。

 いつの日か「ヴィンランド」を見出すはずの主人公トルフィンは、復讐の闇に囚われたままで、目先のことしか見えていない。理想も平穏もかれには無縁のもの。だからいまはまだ、ひたすらに血と泥の物語が綴られるのみである。

 血と泥。しかし、そこに光が差すこともある。連載では、のちに大王と呼ばれることになる青年、クヌート王子を巡り、物語は重要な岐路に差し掛かっている。

 クヌートは、少女とも見まごうような美しい、しかし脆弱な青年。陰謀渦巻く宮廷で育ちながら、その精神の骨格はひ弱で、過酷すぎる現実を受け入れることが出来ずにいた。

 しかし、いま、そのクヌートが、次第に真の指導者へと「脱皮」していく様子が綴られている。いつまでも戦争と殺戮が続くこの地獄のような世界、神の愛に見捨てられたこの冬の世界を救うこと。それがかれの目標。

 だが、そのためには父である王を殺さなければならない。呪われた宿命の王子が、いかにして過酷な試練を乗りこえていくのか、いやもう、読んでいてわくわくが止まらない。連載が始まった頃はここまでおもしろくなるとは思わなかったなあ。

 骨太で歯ごたえのある物語を読みたいひとに、『ヴィンランド・サガ』、お奨めです。