『僕たちの終末』。

僕たちの終末 (ハルキ文庫)

僕たちの終末 (ハルキ文庫)

 おお、文庫化されていたのか。『神様のパズル』、『メシアの処方箋』に続く機本伸司の近未来SF。ぼく、この小説、好きなんだよね。ライトでポップなハードSFを読みたいひとにはお奨めです。

 ハードSFとライトとかポップという言葉は普通巧く結びつかないけれど、このひとは例外。精緻なロジカル・シンキングと甘ったるいラブコメが一種独特な作風を築き上げています。

 この作品の舞台は人類滅亡を間近に控えた2050年頃の地球。主人公たちは地球を脱出する宇宙船を建造するため、資金を集め、建造計画を立てる。

 しかし、そんな彼らの前にさまざまな困難が押し寄せてくるのだった。はたして人類の科学力で恒星間宇宙船を建造することは可能なのか? そして人類滅亡を回避することは可能なのか? 史上最大のプロジェクトが始まる。と、まあ、ざっとそういうお話。

 こう書くと堅苦しいようだけれど、じっさいにはごく読みやすく、わかりやすい。SF初心者でもライトノベルを読むように読みこなせるはず。

 ただ、この作品、ひとつ致命的な欠点があって、どうしようもなくリアリティがないんですよね。人類滅亡を間近に控えているはずなんだけれど、そういう緊張感が全くない。

 また、40年後の近未来が舞台のはずなのに、あまり現代と変わっているようにも思えない。そういう意味では、まるで迫真性がない作品といえるでしょう。

 この小説の読みどころは宇宙船建造を巡る喧々諤々の議論にあります。対話SFといいたいくらい、さまざまな議論が繰り広げられている。

 とくに遂に宇宙船のヴィジョンが明かされる場面は実にスリリングなおもしろさ。その場面のためだけにでも読む価値はあると思う。

 ちなみに、この文庫版はダークレッドの表紙がとってもキュートなんだけれど、Amazonでは表示されません。確認したいひとはここを見てください。