現代日本に人柱の風習を見た!

人柱はミイラと出会う

人柱はミイラと出会う

 アメリカから日本にやって来た留学生リリー・メイスは、ある時、奇妙な光景に出逢う。あたらしい橋の建築現場で、ひとが水のなかにもぐっていくのだ。

 知人に訊いてみると、あれは土地の神様への担保としての「人柱」だという。現代日本では、建物を建てるとき、土地の神様の怒りを鎮めるため、一定期間人間が人柱となって建物のなかの個室にすむ習慣がのこっていたのだ。

 人柱は神聖なものであり、正式に認められるまでのあいだ、部屋から出入りすることはできない。ところが、ある人柱が外へ出る式のとき、そこから発見されたのは死後半年を経過したミイラだった。

 いったいこのミイラの正体は何者なのか? 警察の捜査をよそに推理がはじまる。

 というわけで、この世界と同じようで微妙に(いや、相当に、かな)違う異世界日本を舞台にした石持浅海本格ミステリ連作である。

 この世界では、じっさいにはすでに廃れてしまった風習が生きのこっていて、しかも奇怪に進歩しているという設定。

 現実の日本にすむわれわれの意識と外国人であるリリーの視点がシンクロしているところがポイントで、読者はリリーといっしょに「そりゃないだろ」とツッコミをいれながら読みすすめることになる。「奇妙な日本人」のイメージがさらに奇妙に拡大されているのだ。

 いや、しかし、さすがにこれ、無茶じゃないかなあ。「人柱」なんてシステムが現代に生きのこっていて、しかもその有効性が確認されているのなら、監視システムも発達していそうなもの。そうじゃなかったら人柱が簡単に出入りしてしまうじゃないか。

 ほかの作品も無茶な設定のものばかりで、ここらへんのことをおもしろいと思って読むか、いくらなんでもひどいと思って読むか、そこでこの作品の評価は分かれそうだ。よくこんなこと考えるよ、ほんと。

 一方、本格ミステリとして読むと、さすがによく出来ている。ちょっと伏線のはり方が露骨だったりするけれど、どれも楽しい作品ばかり。肩肘はらずに本格のトリックやらロジックを楽しむことができる。ちょっと泡坂妻夫みたいな印象ですね。

 石持浅海というと、シリアスな印象が強かったけれど、こういう作品も書けるんですねえ。ほかの作品も読んでみることにしたいと思います。はい。