『ターミナル』に見るアメリカン・モザイク。

 id:orangewindさんにお奨めいただいた作品。DMMレンタルで借りてみました。結論からいうと、相当におもしろかった。★★★★は付けてもいい。

 主人公は、飛行機に乗っているあいだに祖国でクーデターが起こり、パスポートが失効した結果、行くことも帰ることも出来なくなった男。

 かれが自由に行動できるのはケネディ国際空港のラウンジだけ。すぐに耐えかねて出て行くものと予想されたが、やがて、かれはこの状況に適応し始める……。

 この映画の見所は、言葉も通じない空港で、出るに出られず帰るに帰れない窮状に追いこまれた男が、持ち前の技術と機知で状況を改善しはじめるところ。

 金もなければ言葉も通じない異国の空港で、ひとり孤独に閉じ込められる。常識で考えれば、頭がおかしくなりそうなシチュエーションだが、かれは果敢に状況を改善する。

 言葉が通じないために一見愚鈍にすら見えるが、実はタフでユーモラス、しかも高度な才能と技術をもっている男なのだ。それにしても、いったいどうやって? それは、映画を見てのお楽しみ。

 最初は巨大な牢獄のように見えていた空港だが、物語が進んでいくと、別の顔を見せはじめる。

 そこでは、インド系、スペイン系、アフリカ系、さまざまな民族、人種の人びとが働いており、また、あらゆる国の店が出展されている。日本の吉野家が移る場面すらある! 

 この空港そのものがアメリカの他文化主義の象徴なのだ。この映画を見ていると、英語という言語の偉大さがわかってくる。どんな人種のひとでも、英語さえ使えれば会話できる。そのはかり知れない意味。

 映画の後半になると、主人公がニューヨークを目指す理由が明らかになる。それはアメリカの文化に大きくかかわっている。

 毎年、毎月、毎日、アメリカの文化に憧れて、様々な国から様々な人びとがやって来る。その人びとに対し、アメリカはどのように対応するか? その点がこの映画の主題だと思う。

 アメリカ人は、この手の御伽噺を作ることが上手いなあ。むずかしい問題をそのまま魅せるのではなく、キュートにラッピングして映画にする。

 エンターテインメントのお手本だ。