現在CLANNADで盛り上がりを見せているKeyの最新作『リトルバスターズ!』18禁版の発売が決定した。『リトルバスターズ!』は2007年7月27日に発売した全年齢向け美少女ゲームで、Kanon、AIR、CLANNADに次ぐメインタイトル。
発表された18禁版タイトルは『リトルバスターズ! エクスタシー(Little Busters - EX)』で2008年発売予定。脇役だった笹瀬川佐々美と二木佳奈多がメインヒロインに昇格する。追加要素もあるようだ。……って、ひでぇタイトルだ。XRATEDでも良いじゃあないか。
むしろ実にいやなタイトルで素晴らしいと思う。これで内容がえろえろぐちょぐちょだったら拍手喝采だけれど、さすがにそこまでしないだろうなあ。
いったん一般向けで発売した作品を18禁で売りなおすというビジネススタイルは、やはり『To Heart2XRATED』が、まず思い浮かぶ。
これ、商業的に大成功した作品でして、ある意味では単なる移植作品に過ぎないにもかかわらず、10万本以上売れている。このやり口は商売になるわけだ。
でも、純愛感動エロゲの総本山、葉鍵の「鍵」であるところのKeyのヒット作が、よりにもよって「エクスタシー」なんて性的な(ニヤニヤ)言葉を付されて再発売、という展開には意外性がある。
「物語が大切なんであって、エロシーンなんていらないんだよ!」というファン心理を逆撫でしているとしか思えないわけで、意図的なのかどうなのか、とてもおもしろい。
当然のごとく反対意見のほうが多いみたいなので、ヒットするかどうか注目したい。さすがにそんなに売れないんじゃないかと思うけれどなあ。そうでもないか?
ぼくは、そのゲームが18禁であろうがあるまいが、大した差はないと思っている。
一部のコアなエロゲオタが、ことさらエロゲのエロシーンをきらうことは事実。この態度、やらないひとには思い切り矛盾して見えるでしょうが、もちろん、ぼくにはその気持ちがわかる。
どうせエロシーンなんていってもぬるいエロCGを何枚かいれて終わり、ですからね。純粋に物語を進めたい人間にとっては邪魔物に過ぎないことは当然かも。
まして、イノセントな「純愛」を高らかに歌い上げるタイプのゲームでは、エロシーンは存在そのものが異物に過ぎない。その清純な世界を思いっきり壊してしまうのだ。
しかし、逆に、異物であるからこそ、世界を壊してしまうからこそ、おもしろい、と考えることも出来る。
「純愛」エロゲにおけるエロシーンとは、いわば封印された欲望が噴出する瞬間である。いくら「物語が大切」なんていっても、そしてそれが事実であっても、エロゲはあくまでエロゲ、ポルノ、オナニーのオカズ、であるわけだ。
きれいにきれいにととのえられた純愛物語は、あらゆる「エロゲ的なる欲望」を裏側に押しこめ、表面を磨きあげることによって成り立っている。しかし、ただひとつのエロシーンで、その努力は台無しになってしまう。
それがいい。
ぼくはそう思う。それはいわば奇麗事だけで作られた世界が決壊する瞬間である。プレイヤーが自分自身の欲望と対面させられる瞬間である。その瞬間があって、初めて、エロゲはエロゲとして完成する。
それでは、エロシーンがない「一般ゲーム」の場合はどうか? 「一般ゲーム」とはいっても、結局、エロゲと同じ欲望によって形づくられていることは自明だ。
それはようするに「エロのないエロゲ」に過ぎない。エロゲの、欲望の隠蔽が完璧に行われたヴァージョン。プレイヤーは見たくないものを見ずに済む。
しかし、18禁版、つまり「エクスタシー」の登場は、見ずに済んだと思っていたものを改めて突きつける。反対意見が多いことも当然だ。でも、おもしろい。
ぼくはエロゲを礼賛するけれど、でも、ギャルゲやエロゲにイノセントな「感動」があり得るとは思っていない。あまりにも綺麗すぎるものは、そのために綺麗じゃないものの存在を思い出させる。
それこそがぼくの愛する薄汚くもおもしろいエロゲの世界である。イノセンスなんて犬にでも食べさせるがいい。