クリスマス、ちょっといい話。


 クリスマス・イヴです。

 そこで、ポール・オースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』から、クリスマスにまつわるちょっといい話を一つ。

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

 小川洋子の『物語の役割』で引用されていた話です。ぼくはこの本で読みました。

物語の役割 (ちくまプリマー新書)

物語の役割 (ちくまプリマー新書)

 家計は深刻な打撃を受けていた。父親の商売は破綻し、求職はほとんどゼロ、国中が不況だった。その年のクリスマス、わが家にツリーはあったがプレゼントはなかった。そんな余裕はとうていなかったのだ。クリスマスイブの晩、私たちはみんな落ち込んだ気分で寝床に入った。

 信じられないことに、クリスマスの朝に起きてみると、ツリーの下にはプレゼントの山が積まれていた。朝ごはんのあいだ、私たちは何とか自分を抑えようとしつつ、記録的なスピードで食事を終えた。

 それから、浮かれ騒ぎがはじまった。まず母が行った。期待に目を輝かせて取り囲む私たちの前で包みを開けると、それは何ヶ月か前に母が「なくした」古いショールだった。父は柄の壊れた古い斧をもらった。妹には前に履いていた古いスリッパ。弟の一人にはつぎの当たったしわくちゃのズボン。私は帽子だった――十一月に食堂に忘れてきたと思っていた帽子である。

 そうした古い、捨てられた品一つひとつが、私たちにはまったくの驚きだった。そのうちに、みんなあんまりゲラゲラ笑うものだから、次の包みの紐をほどくこともろくにできない有様だった。でもいったいどこから来たのか。これら気前よき贈り物は? それは弟のモリスの仕業だった。何ヶ月ものあいだ、なくなっても騒がれそうにない品をモリスはこちこつ隠していたのだ。そしてクリスマスイブに、みんなが寝てからプレゼントをプレゼントをこっそり包んで、ツリーの下に置いたのである。

 この年のクリスマスを、わが家の最良のクリスマスのひとつとして私は記憶している。

 ドン・グレーブス
アラスカ州アンカレッジ

 願わくは、健康なひとも病気のひとも、幸福なひとも不幸なひとも、恋人がいるひともいないひとも、家族がいるひともいないひとも、良いクリスマスを過ごされることを。