冨樫義博は燃えつきない。


 毎週日曜日の楽しみがなくなってしまった。もちろん、『HUNTER×HUNTER』の連載が終わったからだ。

 本当は終わったわけではない。ただ一時的に休載に入っただけだけれど、いつふたたび連載が始まるのかわからない以上、気分としては、半分、終わってしまったように感じられる。

 もちろん、『HUNTER×HUNTER』が休載するのは、今回が初めてではない。10年におよぶ連載期間、その何割かは確実に休んでいることだろう。

 多くのひとが口をそろえて冨樫義博を非難する。サボるな、休むな、もっと真面目に描け、と。しかし、その意見は本当に正しいのだろうか?

 もし、かれが休まずたゆまず働いていたなら、すでに燃えつきてしまっていたのではないだろうか?

 瀬名秀明は、そのウェブログでこう書いている。

さて、実は作家というのもひとつの援助職であり、だからこそ「燃えつき」が起こるのではないかと私は考えている。

(中略)

また、一作ずつ全力を投入するようなタイプの作家は、作品ができるごとに燃えつきていることになる。その燃えつきが編集者や読者からの高評価となって戻ってくれば次のやりがいにつながるが、そうならない場合の喪失感は大きいだろう。

(中略)

燃えつきを回避し、援助職(科学コミュミケータや作家を含む)を続けてゆくためには、ある意味毎日の仕事で力を抜くことが大切となる。さて、読者の皆さん、あなたはテキトーに書かれた小説を読みたいですか? そういった小説を、あなたはどのように評価・批判しますか? という問題がここで立ち現れることになる。

 過去に何人の作家が『少年ジャンプ』で燃えつきていっただろう? 一作、二作、ヒット作を出し、あとは泣かず飛ばず、そんな作家の多いこと。

 もしあなたが『ジャンプ』の読者なら、きっと、そういう作家に心当たりがあるはずだ。

 冨樫義博も、そうなっていてもおかしくなかった。いや、正確には、すでに一度燃えつきてしまっている。そう考える読者は少なくないと思う。

 『幽☆遊☆白書』は、その後半、あきらかにバトル漫画の定石を飛び出していた。物語としては完全に破綻した構成ながら、しかし、圧倒的なまでのテンションを保っていたこの作品は、やがて、消え入るようにして連載終了した。

 このとき、この作者は終わった、そう感じた。同じことを考えたひとは少なくないだろう。不定期連載の『レベルE』も、天才の余技に過ぎないように思われた。

 しかし、燃えつきてしまったと思われた作家は、『HUNTER×HUNTER』でふたたび週刊連載を再開する。しかも、おどろくべきクオリティを保ったまま。

 この脅威は、休載問題と無関係ではないだろう。冨樫は、学んだのではないだろうか? 燃え尽きることなく作品を描きつづけることを。

 もし、かれが一度も休まず『HUNTER×HUNTER』を連載しつづけていたなら、すでに作家として燃えつきてしまっていたのではないだろうか?

 冨樫義博は燃えつきない。それはおどろくべきことだ。かれを賞賛するものも、非難するものも、それだけは否定出来ないだろう。

 漫画の作画が全般的に高密度化することと平行して、最近、定期的に休載を取りながら連載を続ける作家が増えてきているように思う。それは作家たちの燃えつきないための戦術なのだろう。

 『HUNTER×HUNTER』の場合、問題はその休載のタイミングが一定しないことで、今週もぼくは連載再開の報を待ちながらさみしい週末を迎えることになるのである。

HUNTER X HUNTER24 (ジャンプコミックス)

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