エロゲオタにささげる切ない名作18選。


 id:X-24xさんの「18禁ゲーマーへ向ける「小説20選」」がおもしろかったので、真似してみました。同じ趣向をくり返しても仕方ないので、こちらは「切ない」作品縛り。

 エロゲーマーとは、切ないゲームを愛するもの! きっと切ない小説も大好きに違いありません。そこで、センチメンタルな作品ばかり18作品を集めてみました。

 必ずしもベタベタの「泣かせる」作品ばかりではありませんが、読み終わったあとには何かしらセンチメンタルなものがのこるはず。エロゲもいいけれど、小説もね! ←どこの回し者だ。

森鴎外舞姫

舞姫 (集英社文庫)

舞姫 (集英社文庫)

 いわずと知れた日本近代文学初期の名作。日本全国の期待を背負って旅立った異国の地、そこで出逢った「舞姫」エリスとの恋。しかし、それは過酷な現実を前に儚く散る――。格調高い文語体の名文が心震わせます。

太宰治「駈込み訴え」

走れメロス (新潮文庫)

走れメロス (新潮文庫)

 「申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。」イエスを裏切ったユダの、あまりにも切なく胸に迫る思い。太宰を語るならまずこの作品を読みましょう。

乙一「しあわせは子猫のかたち」

失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)

失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)

 その作風から「せつなさの達人」呼ばわりされることになってしまった乙一初期の傑作。いままで読んだ小説のなかでも、一番、「切ない」という言葉が似合う作品かもしれない。ぼくがいままで読んできた短編のなかでも五指に入る。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアたったひとつの冴えたやりかた

 「これがたったひとつの冴えたやりかた」。スペースオペラの形を借りて贈る、天才ティプトリーの遺作。宇宙へ家出した少女がエイリアンと出逢ったところから始まる冒険物語。『SFマガジン』読者投票海外短編部門1位獲得の名作。

・ロバート・F・ヤング『ジョナサンと宇宙クジラ

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

 センチメンタリズムの塊のような作品ばかり書いているロバート・F・ヤングの短編集。『CLANNAD』で引用された「たんぽぽ娘」が有名だが、ぼく的にはこの本に掲載されている「ピネロピへの贈り物」がお奨め。

川島誠「電話が鳴っている」

セカンド・ショット (角川文庫)

セカンド・ショット (角川文庫)

 この作品を、ただ「切ない」ということは不適切かもしれない。重い。そして、あまりにも苦い。思春期の恋の物語、というには苦すぎる結末は一読、忘れがたい。こういう話こそ、エロゲーマー向けかも?

村山由佳『すべての雲は銀の…』

すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)

すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)

 「すべての雲は銀の裏地をもっている」。実の兄に恋人を奪われた失意の青年が、田舎暮らしの生活で癒やされていく物語。村山由佳の小説のなかでも、最も優しい作品だと思う。読後感はほっこりとあたたかい。

栗本薫猫目石

猫目石〈上〉 (角川文庫)

猫目石〈上〉 (角川文庫)

猫目石〈下〉 (角川文庫)

猫目石〈下〉 (角川文庫)

 その少女は、猫のような目をしていた。日本最大のアイドル、16歳の朝吹麻衣子と恋に落ちた青年作家。冬の軽井沢でかれを待ち受けていたもの、それは、恐るべき連続殺人だった。すべてが解決したと思われたとき、最後の舞台の幕がひらく。このエピローグは忘れがたい。

シオドア・スタージョン「輝く断片」

輝く断片 (奇想コレクション)

輝く断片 (奇想コレクション)

 ぼくの昨年のベストにして、天才スタージョンの最高傑作のひとつ。道端で倒れていた美女を拾ったある男が、ついに彼女を失うまで。読むものはかれのいわくいいがたい喪失感を共有することになるだろう。

京極夏彦魍魎の匣

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

 出版界を震撼させた、京極夏彦の妖怪シリーズ第2弾。「少女」と「匣」のイメージがくり返しくり返し立ちあらわれ、衝撃のクライマックスへと至る。映画化が決定したいまこそ、この作品を読むべきタイミングかも。

有栖川有栖『月光ゲーム』

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

 有栖川有栖もまた、「切ない」作品ばかり書いている作家である。かれの作品は、推理小説であると同時に、さびしさの物語でもある。その代表作「学生アリス」シリーズを追いかけるなら、この作品からどうぞ。

滝本竜彦『ネガティヴ・ハッピー・チェーンソー・エッヂ』

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

 わずか2作の長編を書き下ろしたあと、長い沈黙に入ってしまった滝本竜彦のデビュー作。『NHKにようこそ!』も良いが、「切なさ」という切り口で語るならこの作品も印象深い。

ドストエフスキー『白夜』

白夜 (角川文庫クラシックス)

白夜 (角川文庫クラシックス)

 暗く、重苦しく、深刻なイメージが付きまとう「文豪」ドストエフスキー。しかし、この初期作品は、切なくもロマンティックだ。美しい白夜のサンクトペテルブルクで繰りひろげられる、わずか数日間の恋と、そして失恋の物語。

・ジャック・フィニィ「愛の手紙」

 ジャック・フィニィは過去を愛した作家だった。必然、かれは現在を厭うことになった。そんなかれの、過去への、時を越えたラブレター、それが「愛の手紙」である。古めかしくも切なく悲しい恋の物語になみだせよ。

桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

 世界から逃げ出そうとした二人の少女の失敗。もう、だれも砂糖菓子の弾丸なんて撃たない。この小説もまた、「切ない」と一言でいいあらわすには、あまりにも重い作品かもしれない。しかし、読み終わったあとにのこる感情を表すとしたら、やはり「切ない」しかないと思う。

北村薫『秋の花』

秋の花 (創元推理文庫)

秋の花 (創元推理文庫)

 北村薫の「私」シリーズの第3作。ぼくはシリーズ最高傑作だと思う。あるひとりの少女の死を巡り、繰りひろげられる推理。しかし、すべての真相が明かされたとき、悲しい真実が浮かび上がる。エロゲーマーには、『盤上の敵』もお奨め。

石田衣良『美丘』

美丘

美丘

 石田衣良が、『世界の中心で、愛をさけぶ。』型の難病小説に挑戦してみた、というところだろうか。決して独創的な作品ではないが、しかし、上手い。本当に上手い。ここにあるものは閉ざされた「純愛」ではなく、もっと広い信頼のネットワークである。

連城三紀彦「桔梗の宿」

戻り川心中 (光文社文庫)

戻り川心中 (光文社文庫)

 短編集『戻り川心中』に収録。収録作はいずれ劣らぬ傑作だが、そのなかでもこの「桔梗の宿」のセンチメンタリズムは趣深い。色町で生きる少女のその生涯、その哀切さが胸に突き刺さる。これこそ、エロゲーマーに読んでもらうべき一作でしょう。