『水妖日にご用心』。

水妖日にご用心―薬師寺涼子の怪奇事件簿 (ノン・ノベル)

水妖日にご用心―薬師寺涼子の怪奇事件簿 (ノン・ノベル)

「殿下、うかがってよろしいでしょうか」
「お、おう、そなたは礼儀ただしいの。そちらの兇暴な女とは、えらいちがいじゃ。いったい日本には、ヤマトナデシーコとかタオヤーメとかいう女たちはおらんのか」
「いません」
 私は一言で王子さまの幻想を撃ちくだいた。

 『薬師寺涼子の怪奇事件簿』最新刊。

 一向に続刊が出ない『アルスラーン戦記』とか『タイタニア』とか『灼熱の竜騎兵』辺りを尻目に、着実に巻数を重ねるこのシリーズ、今回の舞台は雨の東京。

 物語は、その資産総額、じつに3兆ドルといわれる某国の王子が来日するところから始まり、いつものように奇怪な怪物との対決にもつれ込んでいく。

 今回の敵はその某国を支配する、半人半鰐の魔物「ゴユダ」。天候を操り、雨を降らせて東京を水没させかける美しいモンスターに対し、涼子に打つ手はあるのか?

 もちろん、あるに決まっているのだが、そこらへんの展開は実はどうでもいい。この作品の本領はその軽妙軽快な語り口と、尽きることなく繰りだされる皮肉や毒舌のたぐいにある。

 あいかわらず、物語そのものは荒唐無稽というか、ばかばかしい代物に過ぎないけれど、とにかく1冊読み終えたあともまるで疲労を感じさせない語り口は絶妙。

 『銀河英雄伝説』や『紅塵』の荘重さはかけらもないが、これはこれで並大抵でない技ではある。気楽に読めるという意味ではこれ以上の小説はないかもしれない。

 ただ、このシリーズ、その気になれば無限に生産しつづけられそうなので、出来れば、ほかのシリーズを完結させてから取り組んでほしいのが正直なところ。

 ほかの作品はあきらめるから、『タイタニア』を何とかしてくれないものかな。いや、いってみただけ。

 ちなみにこのシリーズ、遂にアニメ化が決定したらしい。続報が待たれるところです。