正義か、寛容か。


 今日は少し違う角度から、内藤−亀田戦を振り返ってみよう。

 無残にメッキがはがされた。日本人最年少記録になる18歳9カ月5日での世界王座奪取に挑んだ亀田大毅(18)=協栄=は、チャンピオンの内藤大助(33)=宮田=に0−3の判定負け。日本選手との初対戦でもプロ初黒星を喫した。12回には度重なるレスリング行為で何と減点3を受ける前代未聞の反則劇も。大毅は対戦前に「負けたら切腹する」と豪語し、試合終了直後は場内から「切腹コール」が起こったが、負けが告げられると無言のままリングを去った。

 試合後、控室に10分ほど閉じこもった。大毅は父・史郎氏、兄・興毅らとともに、ひと言も発しないまま会場をあとにした。駐車場に出ると、待ち構えたファンからは「大毅、腹切れよ」「切腹!」というヤジが飛んだ

内藤大助(33=宮田)−亀田大毅(18−協栄)の試合を生中継したTBSは大毅が表彰式の最中に無言で引き揚げる様子と、内藤の勝利者インタビューまで放送した。終了後、同局には視聴者から電話が相次いだ。関係者によると大毅に対し「切腹させろ!」という声が多かったという

 「スポニチアネックス」では試合終了後、試合内容に関する緊急アンケートを実施。約1時間で寄せられた意見は700件以上に達した。そのほとんどは亀田大毅の態度やプロレス技まがいの愚行を厳しく批判する内容。今回の一戦に対して、年代、性別を問わずに大多数のファンが厳しい見方を示した。

(中略)

▽22歳女性 亀田は約束通り切腹してください!

 場内からわき起こる切腹コール、放送局に寄せられる「切腹させろ!」という電話……。何かがおかしくないか? 何かが狂っていないか?

 たしかに、大毅の態度は悪かった。試合内容もひどかった。かれがJBC(日本ボクシングコミッション)から何らかの処分を受けることに異存はない。

 ただ、だからといって、まだ18歳の選手へ向けて、いい年をした大人が集団で「切腹しろ」と詰め寄るというのはなあ。尋常じゃないと思うよ。

 試合前の暴言、たび重なる反則、あげくの果てには家族ぐるみの反則教唆、亀田大毅とその家族は、ヒールに要求されるあらゆる条件をかね備えている。

 だから、「国民の期待」を背負った内藤の圧勝は、「正義の裁き」のようにすら見えた。しかし、ボクシングはあくまでスポーツ、あるいは格闘技だ。

 そして、この世に「正義」ほど危うくひとを酔わせるものもない。もう、決戦から二晩が過ぎ去ろうとしている。そろそろ酔いを冷ます頃ではないだろうか。

 初防衛を果たした王者、内藤大助そのひとはどう思っているのだろう?

――大毅選手は切腹するんですかね?

 最初から切らないの分かっているでしょ(笑い)。ネチネチ言ったらかわいそうだし。

 これが大人の態度だよね。

 もちろん、皆、大毅が本当に切腹するとは思っていないからこそ、安心して?罵声を浴びせることが出来るのだろう。もし本当に自殺したら後味が悪いに違いない。

 しかし、じっさいに口汚く侮辱されたのは内藤だ。反則攻撃を受けたのも内藤だ。その内藤がすべてを大らかに受け止めているのだから、「ファン」もその態度を見習ってもいいのではないか。

 既に「正義の鉄槌」は下った。亀田一家の反則行為は、JBCによって裁かれることだろう。次は、寛容の出番だと思う。