「西尾維新全キャラ人気投票」総評。


 Amazonの投票企画「西尾維新全キャラ人気投票」の結果が発表されています。以下、ネタバレあり。

 さて、1位は当然のごとく『戯言シリーズ』の主人公、いーちゃん

 作者本人にとっては意外な展開だったようですが、いや、これは順当な結果だろ。『戯言』の読者は皆、いっくんのことが大好きなんだよ!

 このひと、初期の『クビキリサイクル』、『クビシメロマンチスト』あたりでは人間的情緒が欠落した怪物的人物にも見えました。

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)

 しかし、後半では実は幼馴染みの玖渚が大好きなのに素直になれないツンデレ野郎であることが発覚。

 ひょっとしてただのいくじなしなのでわ?と思わせつつも、何とか主人公属性を発揮、終始、好感度を上げつづけたことが今回の結果に繋がったといえるでしょう。

 むしろ、ぼくは零崎人識が2位を取った理由がわからない。何でこいつこんなに人気あるの?

 3位と4位には《人類最強》哀川潤と《死線の蒼》玖渚友が順当にランクイン。

 その気になればひとりで人類を亡ぼしかねない危険なひとたちですが、可憐な女性陣は戯言の華、彼女たちがいなければ何も始まりません。

 そのあとのベスト10には姫ちゃんとか崩子ちゃんとか子荻ちゃんとか、美少女ぜいが勢ぞろい。

 さりげなく変態のひともはいっていますね。人気あるのか。

 ただひとり『戯言』以外からトップ10にランクインしたのは、『化物語』の戦場ヶ原ひたぎ

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

 『戯言』では(いーちゃんを除くと)ほとんど出て来なかったツンデレキャラながら、そこらの生ぬるいツンデレをあっさり駆逐する超攻撃的性格のもち主。

「……お前、絶対その内、人を殺すぞ」
「そのときは、阿良々木くんにするわ。初めての相手は、阿良々木くんにする。阿良々木くん以外は、選ばない。約束するわ」
「そんな物騒なことをいい台詞みたいに言ってんじゃねえよ! 僕、お前のことは好きだけど、殺されてもいいとまでは思わないよ!」
「殺したいくらいに愛されて、愛する人に殺される。最高の死に方じゃないの」
「そんな歪んだ愛情は嫌だ!」

 というかんじで、毒舌と愛情を阿良々木くんにぶつけまくり。

 「ツン」も「デレ」も核爆発的な破壊力なので、並の男ではとても受け止め切れないでしょう。

 阿良々木くん、よくもつなあ。いくらかわいくても、普通、この子とつきあおうとか思わないぞ。

 西尾維新というひとは、『戯言』の初期作品を書いていた頃は、「ミステリ界の鬼子」的なあつかいを受けていました。

 推理作家なのに、推理小説の常識を全然わきまえず、その枠組みを壊しかねないことをしでかす「恐るべき子供たち」。「脱本格」なんて言葉もあったよね。

 しかし、いまとなっては西尾維新を推理作家というフレームに嵌めようとするひとは少ないと思います。

 また、初期作品に見られた一種の青臭さ、冷血さも、かならずしも西尾作品の特性というわけではなく、ただその作品の狙いに沿って選ばれたスタイルであることも明らかになってきました。

 次々と、おもしろくもわけのわからないキャラクタを生み出しては、どんどん殺していくその作風は、現在、掛け値なしに唯一無二。

 『クビシメロマンチスト』の頃は奈須きのことの類似を取り沙汰されたけれど、いまとなってはひたすらわが道を爆走しているかんじ。

 あの『DEATH NOTE』のノベライズも悪くない出来だったし、12ヶ月連続刊行の時代小説『刀語』も完結間近だし、その「速度」は余人の追随を許さない。

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

 やっぱり日日日辺りとはちょっと役者が違うなあ。『刀語』は完結したら一気読みするつもりなので、実に、楽しみです。

 こういう多作タイプの作家さんは読者としてはありがたいよなあ。感謝、感謝。