ジュブナイルポルノ名作紹介。


 ペトロニウスさんがジュブナイルポルノを読み進めることをあきらめた模様。

本は出会いで、このジャンルって読めるか??と思ったが、これで腰が折れた。もう読まないなー。コストパフォーマンスが悪すぎる。

 ま、そうですね。何しろ要求条件が厳しいので、エロゲほど作者が遊ぶ余地がない(ように見える)。

 『ゼロの使い魔』のヤマグチノボルや、『嘘つきは妹にしておく』の清水マリコなど、いまでは人気者の作家が書いていることもありますが、とくに読めというほどのものでもないと思う。

シスタースプリング―いつかの妹 (美少女文庫)

シスタースプリング―いつかの妹 (美少女文庫)

 ほかには、某新作が出ないSF作家が無名時代にべつの筆名で書いていたなんて話もありますが、ま、どうでもいいですね。

 あえてこれから読もうと思うひとは、ネットで「エロ大和尚」「リッパー・ザ・美少女文庫」の異名を取る*1リッパーさんの怒涛の感想目次(いったい何冊読んでいるんだ)を参考にすると良いかと。

 さて、そういう厳しい条件のなかでもたまにおもしろい作品をかく作家も出て来るものです。お奨めを1冊あげるとすると、やっぱりこの作品かな。

SWEET SWEET SISTER (コアノベルズ)

SWEET SWEET SISTER (コアノベルズ)

 一時期中古が高値沸騰していて作者ですら入手できなかったという本ですが、ようやく再販されて普通に買えるようになったはず。

 これはね、良いよ。いじめ、女装、近親相姦、セックス、SM、恋愛、快楽と苦痛が交錯する支配と被支配のゲーム。いやいや、ぼくの好み。

 とにかく、このひとは抜群に文章のセンスがある。『SWEET SWEET SISTER』の冒頭はこう始まる。

 いつになっても屋根の上というのは好きになれない。
 初夏の陽射しがもろに上半身を焦がすし、昨夜の雨の蒸気に珊瑚樹が揺らぐのを見ていると、こんな天気のいい日にどうしてここにいるのだろうと、ひどく惨めな気分になるからだ。靴下のまま屋根に飛び出した悠樹は、トタンの熱さに何度も脚を組み替えた。

 ね、うまいでしょ?

 この自然さ、心がすっと物語のなかに入っていく感覚、良い小説の条件です。

 作者のひとは本職(?)はエロゲのシナリオライターらしいんだけれど、もっと小説を書いてほしいな。非常に才能を感じる作家のひとりです。ほかにこういう作品もある。

クラスメイト (CORE NOVELS)

クラスメイト (CORE NOVELS)

 うわ、オタクっぽい表紙。でも、こう見えて、内容はシリアス。

 このひとの小説では、「いじめ」がひとつのテーマになっていて、子供たちのときに暴力を伴う無邪気な残酷さを描かせると迫力がある。

 ととのった文体は常に冷ややかな温度を保っており、どんなわいせつな言葉遣いをしてもどこか上品。うんうん、ぼくの好み、好み。

 このひとは最近、ニトロプラスの『月光のカルネヴァーレ』を小説化していますね。送られてきた原稿をいくら読み進めても原作の人物が出てこないので原作の書き手がおどろいたとか(笑)。

月光のカルネヴァーレ ~白銀のカリアティード~ 2 (ガガガ文庫)

月光のカルネヴァーレ ~白銀のカリアティード~ 2 (ガガガ文庫)

 漫画の単行本も出していますが、漫画家より小説家に向いていると思うので、もっともっと、新作を書いてほしいと思います。

 でも、じつはここまでは前振り。この手の小説で一番好きな作品は、実は書籍化されていないネット小説だったりします。

http://www.sainet.or.jp/~hinata/

 葵日向さんの『Pure Innocence』。

 昔はこれがもう、好きで好きで仕方なかった。その頃、『楽園』というネット小説ランキングサイトがありまして、この作品はそのサイトの18禁部門1位を、ダブルスコアで獲得していました。

 2位以下とあまりに得票数が違うことも気になったものの、それ以上に印象的だったのは寄せられた感想。「泣ける」「切ない」といった、とてもポルノ小説の感想とは思えない言葉が並ぶ、並ぶ。

 いまもむかしも素直なぼくですが(異論あり?)、さすがにこれは信じられなかった。

 「ったく、最近の若者は何でも泣けるとかいうから困るよな。ポルノ小説で泣けるわけないだろ」と思って見に行き、あっさり陥落した(笑)。

 さすがに泣きはしなかったけれど、ほんとに切ない話。作者は男性ですが、小説は女の子の一人称。

 ある少女が、ふとした偶然から同級生の男の子とからだを重ねてしまい、その後も関係をもつようになる物語。

 その少年はだんだん彼女にとって大切な存在になっていくのだけれど、あくまでそれは世間でいう「恋人」ではない。かといって、セックスフレンドというほどドライな関係でもない。

 名前の付けられない感情と、名前の付けられない関係を抱えたまま、彼女は少しずつ深みに嵌まっていく。

 ざんねんなことに、この作品、完全に未完のまま放り出されています。でも、もし完結していたら、そのまま書籍化しても何の問題もないクオリティだと思う。

 仮に書籍化されたら買う。絶対買う。ないだろうけれど。おかげでぼくのなかでは未だに「続きを読みたくてたまらない未完作品」の上位をキープしているんですよね。

 ま、もう続編は書かれないでしょうけど、すごく甘酸っぱい良い青春恋愛小説です。よく女の子の一人称でこんな小説書けるなあ。

 ぼくもペトロニウスさんと同じで、フランス書院のあの黒い表紙のポルノ小説は買ったことがなかったりします。ぼくがまるで読んだことがないジャンルってこれくらいじゃないかな、と思うくらい。

 ジュブナイルポルノだって大同小異なのだけれど、ひょっとしたら、10年後には、ここからエロおもしろい作品が出てこないともかぎらない。

 じっさい、わかつきひかるさんのように、このジャンルからライトノベルへ越境する作家も出て来ている。このジャンルがライトノベルより下かと言うと、かならずしもそういうものでもないと思いますね、ぼくは。

AKUMAで少女 (HJ文庫)

AKUMAで少女 (HJ文庫)

My妹(マイマイ) (美少女文庫)

My妹(マイマイ) (美少女文庫)

*1:いま、ぼくが名づけた。