「柳の木」を読んで泣け!

山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)

山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)

「わたしなんか生まれてこなければよかったのよ」
「そんなふうにいわないで……あなたを愛しています」

 萩尾望都の最新短編集。

 「珠玉の短編」という形容は手垢が付きすぎて陳腐だが、その短編が萩尾望都の作品となれば、使い古されたことばも真新しい輝きを帯びるだろう。

 『トーマの心臓』、『マージナル』、『残酷な神が支配する』といった長編で雄大な構成力を見せる萩尾は、一方で、日本漫画史にその名を刻む短編の天才である。

トーマの心臓 (小学館文庫)

トーマの心臓 (小学館文庫)

マージナル (1) (小学館文庫)

マージナル (1) (小学館文庫)

残酷な神が支配する (1) (小学館文庫)

残酷な神が支配する (1) (小学館文庫)

 「11人いる!」の卓抜な着想、「訪問者」の柔らかな情緒、そして読者のだれもが一度読んだなら一生忘れられなくなるであろう、「半神」の、あの、暗黒。

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

訪問者 (小学館文庫)

訪問者 (小学館文庫)

半神 (小学館文庫)

半神 (小学館文庫)

 ひょっとしてこれ世界一おもしろいヴァンパイアものなんじゃないですか、と思ってしまう『ポーの一族』も、短編連載作品である。

ポーの一族 (1) (小学館文庫)

ポーの一族 (1) (小学館文庫)

 長編も天才、短編も天才、しかもかけばかくほどその技は磨きぬかれ、その世界は澄んで行く。欠点ないのかよ! かわいげがない作家だなあ。

 この『山へ行く』でも、萩尾はその至芸を存分に見せてくれる。コミカルな作品からダークな作品まで、多彩な内容で楽しいが、圧巻は何といっても「柳の木」。

 何を書いてもネタバレになるので、何も書かない。読んで泣け! 『らき☆すた』の22話で泣いたひとにおすすめ(読めばわかる)。