『神様ドォルズ』の「目」に注目!

神様ドォルズ 1 (サンデーGXコミックス)

神様ドォルズ 1 (サンデーGXコミックス)

「臆病だろうと…… 情けなかろうと…… いっぱい人が死ぬよかいいよなぁ?」

 目だ。

 やむむらはじめの作品を特徴付けているものは、何よりその作中人物の目である。

 もちろん、どんな漫画でも、目の描写は重要な効果を果たしているものだろう。萩尾望都には萩尾望都の目があり、小畑健には小畑健の目がある。しかし、やまむらはじめの描く目は、とりわけ印象的で、心に深く刻まれる。

 そのやまむらの最新作『神様ドォルズ』、帯にはなぜか「ロリと巨乳のキャッチー攻撃」などと書かれているが、全然そういう漫画ではありません。いったい何を考えてこんな惹句にしたんだか。

 やけにポップな表紙をめくってみれば、そこに広がるものは、ちょっと古風な伝奇小説の世界。東京で平穏に暮らす青年匡平のもとに、「案山子(かかし)」と呼ばれる人形を操る少女、詩緒(うたお)があらわれたところから、物語は幕をあける。

 この第1巻の時点ではまだ助走もいいところだが、既におもしろくなりそうな雰囲気はそこかしかにただよっている。うんうん、ぼくの好み。

 いままでのやまむら作品と少し違うのは、すぐには日常が崩壊していかないところだろうか。遠い村から訪れた「異形」はたしかに匡平の軟派な生活を壊していくが、しかし、かれは必死でそれを維持しようとする。

 かれは平和の価値を知っているのだ。だから、匡平は一見、どこにでもいる平和な日本に慣れきった若者に見える。

 その目は穏やかで表情ゆたか。しかし、物語がすすんでいくと、その奥に隠されたものが垣間見えてくる。暗い、沈んだ、何か亡霊のようなものに憑かれてそれに駆り立てられる男の目。やはり何も変わってはいないのだ。

 はたしてかれの内側に眠るものはかれをどこに連れて行くのだろう。平穏な日常はいつまで維持されるのだろうか。今後の展開が気になります。「ロリと巨乳」のヒロインたちも今回はいやみなくえがけていると思う。

 やまむらはじめの世界では、「男」と「女」、「少年」と「少女」は、はっきりと別の人種である。その意味で、かれの作品は、最近の中性的な美少年、美少女ばかりの萌え漫画とはまるで違う。

 そして、しばしばその落差が主人公の動機となって物語を駆動していく。そういう意味で、やまむらの作品はいまどきめったにないほどまっとうな「少年漫画」だといえる。髪型を変えるとだれがだれだかわからなくなる漫画よりはこっちのほうが好きだなあ。

 いままではいまひとつ垢抜けないというか、泥臭いところが抜けなかったのだけれど(そもそもいまどき、SFものと伝奇ものを交互に描くなんてね)、この作品ではだいぶその点も改善されているように思える。

 さて、やまむらはじめは新境地を拓くことが出来るだろうか。期待の一作である。詩緒さん、文句なしにかわいいです! メイド服、着せれば良かったのに。