「たんぽぽ娘」


 ロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」をようやく読みました。

 この作品を収録した『コバルト文庫海外ロマンチックSF傑作選(2)』が入手困難になって幾十年、幻の名作としてSFファンのあいだで語り継がれていた作品です。

 こういう入手しづらい作品を読んでは、新参のファンに「え〜、きみ、読んでいないの。あれはおもしろかったよ。人生損してるね」といやみったらしく語るのが古参SFオタの楽しみ。

 ぼくもようやく自慢たらしくさえずる側に回れて、まずは良かった(『今日の早川さん』の読みすぎかも)。

 で、内容なんですが、うん、いい話ですよね。いやまあ、物語そのものはごくごく古典的なタイムマシンSFに過ぎないんだけれど、甘く切ない描写が素晴らしい。何だかんだいって皆こういうの好きだよね系。

 やっぱりロバート・F・ヤングのウェットな短編はいいよなあ。ま、それもこれも伊藤典夫さんの名訳あっての話ですが。

 よく取り上げられる一節ですが、原文の、

 Day before yesterday I saw a rabbit, and yesterday a deer, and today, you.

 これを「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」と訳すセンスが最高です。仮名と漢字のバランスが完璧。

 これからSFを読もうと思うひとは訳者で選ぶのもひとつの手だと思う。浅倉久志さんや伊藤典夫さんが訳した作品は最初から日本語で発表されたかのように読みやすいものが多い。

 海外SFは難解だなんてとんでもない話です。難解なのもあるけどさ。