『Gボーイズ冬戦争』

Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパークVII

Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパークVII

 夏の池袋がどういう街かは、おれよりもあんたのほうがよく知っているかもしれない。埼玉や北東京から集まった冴えないガキが粋がって、明け方まで羽虫のように飛びまわるのだ。「潜入、警視庁24時! カメラは見た!!」なんて番組で、誰でも補導される家出少年少女を見たことがあるだろう。
 おれの夏の朝一番の仕事は、そのガキどもが残したゴミ掃除なのだ。なかでも一番たちが悪いのは、中身の半分残ったカップ麺(割り箸はさしたまま)とタイルの歩道に刷りこむように残されたチューインガムの跡である。爽やかに晴れた夏の朝に、そんなゴミをたっぷり見せつけられる。気分は最高だよな。

 ある日、突然、見慣れた街が戦場と化す。それが内戦だ。若き王タカシが統べるGボーイズと、対立チームの内戦が池袋を血で染めたのは数年前のこと。

 そのとき、血で血を洗う争いを止めたのは、どちらのチームにも属さないマコトだった。

 そしていま、ふたたび池袋で内戦の火蓋が切って落とされようとしている。タカシの権力を狙う若者ヒロトが、Gボーイズ内の一集団を率いて内紛を起こそうとしているのだ。

 このままではGボーイズは真っ二つになり、池袋のバランスは根底から崩れることになる。そして同じ頃、池袋のある組織が正体不明の壊し屋「影」を雇ったという噂が流れる。何者かが池袋の勢力図を塗り変えようとしているのか?

 マコトは窮地に追い込まれたタカシを救うべく、ひとり、停戦へ向けた行動を始める。好評『池袋ウエストゲートパーク』第七弾!

 前回、マコトは各界にはりめぐらされた人脈を駆使し、東京副都知事の池袋浄化計画を防ぎとめた。今回、かれは闇の世界で恐れられる壊し屋「影」と遭遇する。

 そして、そのかたわら、自主制作映画に出演したりもする。いったいその人脈はどこまで広がっていくのか、想像を絶するものがある。

 初めて読者のまえに姿をあらわしたとき、かれは池袋のストリートで暮らす、ごく平凡な青年だった。職業は母親の果物屋手伝い、それもどこまで真面目に働いているのか怪しい、

 老人が「いまどきの若い者ときたら」と話す時に思い浮かべるような、どこにでもいるいいかげんな若者。特別なことといえば、池袋の王タカシと幼馴染みであることくらい。

 しかし、マコトの人脈はそこからすさまじい勢いで成長していく。果物屋手伝いであることに変わりはないのだが、その卓越したトラブルシューティングのスキルはしだいに噂を呼び、多くのひとがかれの助けを求めるようになるのだ。

 そして、その過程で出会った人びととのつながりが、そのままかれの武器になる。実に28におよぶ事件を解決に導いたいま、かれの人間関係はGボーイズはもちろん、ヤクザや警察にまでおよんでいる。

 どこまでもニュートラルで、ひとつの組織に属さないことがマコトの強み。いくつもの勢力のあいだを巧みに泳ぎまわりながら、かれは池袋の街でトラブルに足を突っ込んでしまった人びとを助け出していく。

 トラブル・イズ・ヒズ・ライフ。トラブルを解決しているときだけ、本当に生きているといえる男。いまのマコトに、初登場のときのような現実的な存在感を感じることはできないだろう。

 いまのマコトは、ときにおどろくべき教養を垣間見せながら、シニカルかつホットに難事件を解決していく、スーパーヒーローだ。

 この巻の見所は、そのマコトと「キング」タカシの友情物語。南極の氷のようにクールなタカシが、マコトに対して抱いている感情がほの見える。池袋を統べる孤独な王にとっても、マコトはただひとりの無条件で信頼できる友人なのである。